ブラジル人のポルトガル移住が増加=不景気や暴力犯罪多発で

 不景気や暴力犯罪の多発に嫌気がさしたなどの理由で、2017年に多くのブラジル人が同じ言語圏のポルトガルに移住した。
 2017年に、ポルトガルに旅行したブラジル人は87万人いたが、それ以外に8万人が移住した。ただし、この移住者数は正規の手続きで確認された数で、実際にはもっと多いと言われている。
 
 書籍『ポルトガル人』の作者アナ・シルヴィア・スコットさんによると、ポルトガルでのブラジル移民の受け入れ方には変化が生じている。
 それによると、70~90年代にかけてのポルトガル人は、同国に移住してくるブラジル人を暖かく迎えたし、親しみも覚えていたという。それは1977年に、ブラジルのドラマ「ガブリエラ」(ブラジルでの放送は1975年)が大ヒットしたことからもうかがわれる。サッカーでも、80年代に活躍した、ジーコやファルカン、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾの「黄金カルテット」がポルトガルでも大人気だった。90年代前半にコーロル大統領の失政から逃れてきていたブラジル移民のイメージは、「医者や企業家など、裕福で教育レベルの高い人」、といったものだったという。
 2000年代に入ってからのポルトガルへの移民は、建設作業員や店の売り子、レストランの従業員、家庭内労働者などが目立ちはじめた。
 2010年前後のブラジルはBRICS諸国のひとつとして大きな経済成長を遂げ、ポルトガルが不況に苦しんでいたが、現在はブラジル経済的が落ち込み、ポルトガル経済は好調で、両国の状態は対照的だ。

 なお、ブラジル人の移住先にポルトガルが多いのは、ポルトガルは旧宗主国で言語の壁も小さいからだ。2016年の統計によると、ブラジル人が取得したヨーロッパ諸国の国籍の内、ポルトガル国籍はその36・3%を占めてトップだ。2位はスペイン国籍の27%、3位はイタリア国籍の15・4%だったという。(8日付R7サイトなどより)