米朝首脳会談は6月12日=会場シンガポールはどんな国=サンパウロ市在住 橘かおる

シンガポール。マーライオンを前景としたセントラル地区のダウンタウン・コア(By ペウゲオト、from Wikimedia Commons)

シンガポール。マーライオンを前景としたセントラル地区のダウンタウン・コア(By ペウゲオト、from Wikimedia Commons)

 世界が注目していた米国トランプ大統領と北朝鮮金委員長の史上初の会談が、6月12日シンガポールで行われると発表されました。
 この米朝平和路線の前触れの様に、北朝鮮は拘留していた3人の米国人を解放しましたし、また同国豊渓里にある核開発関連設備の廃棄を今月中に公開実施すると発表しています。この会談が成功すれば朝鮮半島を中心とする東アジア地域の平和が約束され、日本の安全も担保されます。
 という事でこの会談の結果に大きな関心が持たれています。ですが、ここでは一旦その成果のことをさて置いて「なぜシンガポールが会場として選ばれたのか?」「シンガポールとは一体どんな所(国)なのか?」など、その辺を調べてみたいと思います。

▼何故この地が選ばれたか

 会談場所としては、休戦ライン現場の板門店、中立国スイス、スエーデン、シンガポールなどが候補として噂されていました。
 特に板門店は米・朝が戦火を交えた地でもあり、トランプさんが「よし、俺が行って決めてやろう」と大乗り気だと言われてました。
 しかし側近が冷静に分析して「初めての会談にアメリカ側から相手の土地に出向くのは位下のようで適切でない。大国としての格好も考える必要がある」と意見を述べ、また、随行者、報道陣などの(移動、宿泊などの)便宜を考慮し、板門店をはずしたとのことです。
 これに対し、シンガポールは中立で米・朝それぞれとも国交がある。都市国家で管理が十分に行き届く、周りを海に囲まれているので警備の面でもやり易い、などから選ばれたとのことです。
 一寸細かい話ですが、シンガポールなら朝鮮から4700キロと、そう遠くなく、同国が持っている政府専用機でも十分行けると言うメリットもあるのだそうです。同専用機は旧ソ連製のイリュウシン62型で航続距離は1万米。計算上は十分行けます。
 ただ、旧型機なので万一の場合部品などの入手が不自由だということや、北鮮にこのルートに経験のあるパイロットが居るのか?という心配もあると囁かれています。専用機はアメリカ大統領機の「AIR FORCE ONE」をもじって「AIR FORCE UM(UMは金正恩の恩)」と外国記者仲間で呼ばれているのだそうです。

▼シンガポールはどんな国

 さてそのシンガポール、ブラジルでは実態はあまり知られてませんが、中国文で新嘉坡、別表をご覧下さい。マレー半島の南端で、本島と60以上の小島を合わせてシンガポール共和国となっています。国の面積は720KM2と東京都の23区程度の広さで、写真の様な都市そのものが国となっている新しい国です。
 シンガポールと言えば、昭和初期生まれの日本人には、日本軍のマレー半島快進撃、同島を守っていた英将が条件付き降伏を望んだのに対し、山下将軍が「イエスかノーか」と即断で降伏を迫った話が記憶に残っています。日本占領の1942年、この島は『昭南島』と改名されてました。
 さて、話を戻して、1965年8月、中国系人が多数を占めるこの島はマレーシアから分離独立を果し、以後世界に注目されるような急発展を遂げて、今日、世界の交易、金融の一大拠点となっております。シンガポールには中国系、マレー系、インド系と多くの人種が入り混じって活躍していますが、政治、経済などの中心は中国系人が主力と言われています。
 特筆されるのは、この狭い国土で世界との貿易を活発に行い、国境のない金融活動と共に、大きな利益を挙げていることです。一人当たりの国内所得は8万5400ドル程になり、これは世界3位になるのでから立派なものです。
 更に教育、医療、工業競争力の面でも世界の上位にあり、この地域のモデル、お手本とされています。国土、資源などは相当に違いますが、同じ熱帯圏の国としてブラジルも大いに学びたいところですね。

▼日本はどうしたら良いか

 米国トランプさん、北朝鮮金さん共個性の強い人ですから、この会談でどんな結果がもたらされるか、容易に予測は出来ません。しかし、今までの状況から判断して、大体次のようになるのではないか、と思われます。
★半世紀も前に戦火を交えそのままになっている(米/韓)(中/北鮮)4カ国で戦争状態を終わらせる『平和条約』を結ぶ
★北朝鮮の核・ミサイル兵器を廃棄し、朝鮮半島全体の非核化を推進する。
 これはこれまでの、今にも核ミサイルをぶっ放すかと思われた状態からは大きな進歩で、トランプさん、金さんは平和招来者としてその会談成果を大々的に報ずると思われます。
 ところでこの様な事態の急進展に対して、我らのアベさんはどう対処しているのでしょう。「北鮮の言う事は簡単に信用してはいけません。約束を実行するまで警戒を緩めてはいけません」と各国に触れ歩いています。また、拉致被害者に関しても「全ての被害者を帰えさぬ内は朝鮮との平和合意などを進めてはダメだ」とも声明しています。
 直接の関係4カ国が対立解消、平和推進の太鼓を叩いているのに、『カヤの外』のアベさんだけがこれに逆らっている様な印象を与えているのです。一体、日本は朝鮮半島の平和を望んでいるのか、反対なのか、(イエスかノーか)」と批判されています。
 朝鮮の隣に在って関わりが深い日本としてはいったいどう対処すれば良いのか? ここで世界情勢に詳しい古屋さんの意見を聞いて見ましょう。
 「日本は南・北(韓・鮮/米・中)の平和推進に前向きに参加すべきだ。北鮮の核兵器が廃棄されれば日本にとって大きな重しの一つが取り除かれる。また、国際的にも平和推進の日本への評価が高まる。日本にとって大きなメリットになる」。更に「拉致被害者の件については、米、韓などの交渉当事国は20に満たない拉致家族の数と、和平を拒否してミサイル戦になった場合の被害者の何十万と言う数、当然これらを比較して行く道を決める。結論は明白ではないか」「それに拉致の問題は、もし朝鮮全体の交流、往来が自由化されれば、自然に実態が判明し、解決される事柄ではないか。目先の感情論に惑わされず、もっと大局的に物事を見定めてたいものだ」と、成る程、さすが外国で鍛えた古屋さんのご意見です。
 さて、いずれにしても朝鮮問題の方向を左右する首脳会談まで、あと1ヶ月です。
 これからどんな新事態が起こるか、どう変化するか、関心を持って見守って行きたいものです。