《ブラジル》ナマの日本を伝える人気ユーチューバーという存在

 在日日系人を代表するユーチューバーの一人、デボラ・ハッヅさん(Deborah Hudz、三世)から「今年中にチャンネル登録100万人を目指します」と聞き、感心した。
 と同時に「日本の日本人は彼女のような存在に気付いているのだろうか」と気になった。「日本の新聞や雑誌に出たことがない」というからだ。
 彼女はデカセギ家庭の娘として日本で生まれ育った。日本で夜間高校を卒業したから日本語の読み書きもでき、日本社会のことがも分かる。在日ブラジル人の眼で見たナマの日本社会を映像で語り、当地の非日系ブラジル人に爆発的に人気を博している。
 5月末時点で彼女のビデオチャンネル(www.youtube.com/user/LikeAPrincesz/videos)に登録している人は、なんと62万8千人。


 良くも悪くも彼女の体験はデカセギ子弟そのもの、ありのままの在日ブラジル人の生活が垣間見られる。彼女の出世作は「13 COISAS QUE SAO PROIBIDAS NA ESCOLA JAPONESA」(日本の学校で禁止されている13項目、www.youtube.com/watch?v=Uuh0PoxldeU)で、2016年11月に公開。
 なんと3週間で100万回も再生され、わずか3カ月間で10万人の登録者が増えた。つまり3カ月で100万人に見られ、うち10万人が気に入った。5月31日現在でこのビデオは455万回も再生されている。
 内容を見たが、日本人にとっては当たり前のことを言っているに過ぎない。
 彼女は6年前に高校を卒業。その実体験として「教科書は他人から借りてはいけない」「髪の毛を染めてはダメ」「爪を延ばしてはダメ」「制服のスカートは膝下」「化粧は一切ダメ」などと説明。
 本人にも、なぜそれが爆発的にブラジル人に受けたのかがピンと来ていない様子。だがブラジル人にとっては、身近な分かりやすい内容であるが故に、ブラジルの学校との差に愕然としたに違いない。
 その映像に寄せられたコメントだけでなんと1万5千件余り。幾つか読んで驚いた。
 いわく「絶対日本には住みたくない」「私なら登校初日に退学にされるわ」「髪の毛を縛らなくてはならないなら、勉強なんかしたくない」「つまり日本の学校はブラジルの軍隊学校と一緒ね」といったコメントがズラリと並ぶ。
 彼女のような存在から日本の実情を筒抜けに当地のブラジル人は聞いている。日本の日本人にとっては「当たり前」の現実でも、外国人目線で見ると「軍隊」に見えたりする。文化のギャップが大きいほど、彼女のビデオは見られる。
 彼女には日本の悪い面を強調するつもりは一切ない。事実、日本が色々な角度から紹介されている。中には、自殺の名所「青木ガ原樹海を探検」との作品もあり、これも人気が高い。
 彼女のたくさんの作品の中から人気が高いのが、前述の「日本の学校」のようなブラジル人的には「嫌な日本」だったり、青木ガ原樹海のような「恐い日本」だったりする訳だ。
 我々も常々痛感するが、良いニュースはあまり話題にならない。悪いニュースの方がどうしてもインパクトがある。結果的に、日本の良くない面を伝える内容の方が再生回数が多くなるのだろう。

来社したデボラさん

来社したデボラさん

 デボラさんはデカセギに行った両親のもとで、1994年6月9日に日本で生まれた。父は二世で、父方の祖父は山口県、祖母は鹿児島県。母方は沖縄系。現在は静岡県に住む。じつに17年ぶりにこの4月に一時帰伯し、6月に再び日本へ戻る。
 17歳の時に遊びでユーチューバーになり、「日本式お化粧の仕方」などの映像を撮って上げていたが、平凡な登録者数しか集まらなかった。
 ところが、前述の「日本の学校」が大ヒットしてから一躍有名人に。今回、帰伯して「聖市の繁華街を歩いていて、いきなりブラジル人からサインを求められた」というからスゴイ。
 彼女のような「普通のデカセギ子弟」の声がすぐにブラジル人大衆に届く時代になった。
 だが、これは諸刃の剣だ。デカセギが「工場でこんな目に遭った」とか「日本人から差別された」と感じれば、それも伝わる。在日ブラジル人の実体験を通して、ブラジルにおける日本のイメージが悪化しないことを切に祈りたい。(深)