《ブラジル》殺人事件発生率は世界有数=年間10万人あたり30人が殺害される

NGO団体が殺人発生率の高さに抗議して、リオのコパカバーナ海岸に十字架をたてたことも(Tomaz Silva/Agência Brasil)

NGO団体が殺人発生率の高さに抗議して、リオのコパカバーナ海岸に十字架をたてたことも(Tomaz Silva/Agência Brasil)

 2016年にブラジル国内で発生した殺人事件の発生現場を地図に落としこみ、州ごとの治安状況の違いを表した「2018年版暴力地図」がブラジル保健省のデータを元に作成された。
 調査によると、16年は、統計開始後初めて、殺人事件発生率が人口10万人あたり30人に到達した。同年の殺人事件発生件数は、10年前の2006年より14%増の6万2517件で、人口10万人あたり30・3人が殺された計算になる。この数値は欧州の30倍だ。
 調査によると、ブラジルでは2006年から2016年までの10年間で55万3千人が殺された。2016年に発生した殺人事件の71・1%は銃によるものだった。
 ブラジル治安フォーラムの幹部、サミーラ・ブエノ氏は、「ブラジルは世界でも屈指の殺人発生率の高い国。殺人発生率がブラジルより高いのは中米のホンジュラスと、エル・サルバドルだけ」と語っている。
 ブラジル全体の殺人発生率は10万人あたり30・3人だが、州別の違いは大きい。
 最も発生率の高いセルジッペ州は10万人あたり64・7人で、アラゴアス州の54・2人や、リオ・グランデ・ド・ノルテ州の53・4人が続く。これら3州は全て北東部だ。
 最も発生率が低いのはサンパウロ州の10・9人で、サンタカタリーナ州の14・2人、ピアウイ州の21・8人がこれに続く。
 2006年から2016年までの間に最も殺人発生率が高まったのはリオ・グランデ・ド・ノルテ州で、256・9%増えた。最も下がったのはサンパウロ州で、46・1%減少した。
 15~29歳の若者に限定した場合の殺人発生率は、全体平均の10万人あたり30・3人の倍以上となる65・5人だった。2016年は3万3590人の若者が殺され、2015年の3万1264人より7・4%も増加した。
 「男性の若者」に限定した数値はさらに悪く、10万人あたり280・6人となる。「2018年版暴力地図」によると、2016年に発生した殺人事件の犠牲者の56・5%は15歳から29歳までの男性だった。
 また、殺人事件の犠牲者を肌の色で分けると、黒人・褐色(パルド)が殺される率は非黒人の2・5倍だった。2006年から2016年の黒人系犠牲者は23・1%増えたが、非黒人系の犠牲者は6・8%減った。
 同様の傾向は女性にも見られ、黒人系女性の犠牲者は15・4%増えたのに、非黒人系女性の犠牲者は8%減っている。
 前述のサミーラ・ブエノ氏は、今回のデータと2017年10月に発表された警察の統計は同じ年のものでも数値の違いが見られるとした上で、典型的な殺人事件の犠牲者像は「若い男性の黒人で一定している」と語っている。(5日付G1サイトより)