歌手とバンドが作り出すハーモニー

 サンパウロ市リベルダーデ区の宮城県人会館で3日、バンド伴奏で歌を競う第66回全伯大会が開かれた▼バンド四つの生演奏での大会は、CDで行うカラオケ大会と違い、音やリズムが狂ったり、演奏が止まったりというトラブルも起こりうる。また、審査員の中には「あそこで楽器が少し走ったから歌手も早く入ってしまった」「あのバンドの誰々の音はきれいだった」などといった評価まで出来る人もいる。同じ音楽に接しても、見えるものや聞こえるものが違う事を痛感する▼だが、それ以上に思うのはバンドがチームワークであるという事。1人がずば抜けて上手くても、他の人が足を引っ張る時もあるし、少人数だが熱心に練習を重ね、聴きやすく歌いやすい演奏をしてくれるバンドもある。歌手が走ったり、遅れたりした時もある程度あわせられるのも、折々に調音が必要なのも、生演奏ならではだ▼桶は1枚でも板が短ければ、その高さまでしか水が入らない。同様に、バンドも各人が技量を高めなければ、良い演奏は出来ない。また、バンドでは、1人のミスがハーモニーを狂わせ、演奏の質を決めてしまう可能性がある。だが、ある程度までは、技量の高い演奏者が仲間や歌手のミスや欠けを補う事も可能だ。ソロなどで1人に注目が集まる事はあっても、各人が全体に対して責任を負い、歌手と共にハーモニーを作り出すのが生演奏の醍醐味だろう▼現在の主流はCD伴奏の大会だが、昔の歌謡大会は皆バンド演奏だった事を考えると、かつての「のど自慢大会」が偲ばれる雰囲気だ。ハーモニーの美しさや人の和について考える場としても残して欲しい、日系コロニアの財産的イベントだ。(み)