ブラジル南部でトキソプラズマ流行=サンタマリアで薬不足が深刻化

 リオ・グランデ・ド・スル州サンタマリア市で、トキソプラズマ症が流行し、今月末には治療薬さえなくなりかねないと12日付現地紙などが報じた。
 トキソプラズマ症は原虫感染症の一つで、世界人口の3分の1が感染しているとも言われるが、健康な成人なら、感染しても無兆候、または軽い風邪のような症状が現れる程度で済む。だが、臓器移植後の人やエイズ患者のように免疫抑制状態にある人や、胎児、幼児などは、重症化して死に至る事もある。重症化すると脳炎や神経系疾患も起き、肺や心臓、肝臓、眼球などに影響が及ぶ。
 サンタマリア市で感染が確認された患者は510人で、確認作業中の人も212人いる。感染確認例には、流産2件、死産2件、胎内感染2件が含まれている。
 感染拡大は予想以上のペースで進んでおり、市保健局発表の患者数は、先週の480人から510人に増えた。確認作業中の患者の内、133人は妊婦で、胎内感染が起こる可能性の懸念も生じている。また、確認作業中の患者の例には、流産1件と17人の赤ん坊が含まれている。
 同市での感染拡大は4月から目立ち始め、現在ではブラジル史上最大の流行状態と位置づけられている。同市では、医師や保健行政の関係者による対応のあり方が見直され、当面の妊娠回避も指導項目の一つとされた。
 感染源特定作業は5月から始まり、水が汚染されていた可能性が取り沙汰されている。だが、野菜や果物、肉類が感染源の可能性もあり、慎重な調査が行われている。
 事態を重く見た保健省は、4月に調査員を派遣し、50項目を越える質問用紙を使っての調査活動を実施。約2カ月に及ぶ調査内容は8日にブラジリアに持ち帰られた。
 同市ではこれまでも、15~20件程度の症例が報告された年があったが、今回のように爆発的に増えたのは初めてだ。同市は4月以降、州内ならびにパラナ州の市町村から治療薬を融通してもらっていたが、それも今月末に底をつく可能性が高く、今度はサンパウロ州からの薬寄贈を待っている。
 また、薬が不足する事態も起こりうると知り、連邦検察庁も保健省に、早期に薬を購入する事を約束するよう要請した。