《ブラジル》犯罪組織PCCは南米一=担当捜査官が実態を語る=検察と警察が協力して対峙を

 サンパウロ州に本拠を置く犯罪組織「州都第一コマンド(PCC)」に関する捜査担当で、過去5年間に300人以上を起訴したサンパウロ州検察局のガキヤ・リンコウン捜査官が「PCCは南米一の犯罪組織」と明言したと13日付現地紙が報じた。
 同氏によると、PCCが「マフィア」の範疇に入っていないのは資金洗浄力が不十分なためだ。だが、現在は国際的な麻薬取引にも手を染めており、マフィアの一つとなる日は近いという。
 PCC構成員はパラグアイやボリビアでも増えており、国内外での勢力や影響力拡大のため、リオ州を本拠とするコマンド・ヴェルメーリョ(CV)やその傘下の組織の構成員を100人以上殺している。また、刑務所職員や警官殺しで組織の力を誇示し、国民の恐怖心を煽った時期もある。
 同氏によると、2006年に起きたような警官との衝突や攻撃はもう起きないが、ライバル組織の構成員やPCC内の反乱分子を殺す様子を録画したビデオを流し、殺害後の遺体が発見されないよう処分する事で、国民や不満分子を疑心暗鬼に陥らせるという戦略は更に広まるという。
 その他にも、リオ州内でCVに対抗している、第3純血コマンド(TCP)やアミーゴ・ドス・アミーゴス(ADA)といった犯罪組織に武器や麻薬、人材を提供して連帯を強めてCVを押さえ込む、ペルーやコロンビアと国境を接している北部に勢力を伸ばすといった戦略もとっている。
 他方、従来は麻薬販売者から購入し、下請けの密売者に仲介する形が多かったパラグアイやボリビアからの麻薬を、直接購入して小売まで統括。個人的に行っていた欧州などへの麻薬販売も組織で行うようになり、国際的な麻薬密売組織に様変わりしてきている。
 欧州への麻薬販売を組織の仕事にしたロジェリオ・ジェレミアス・デ・シモネ(通称ジェジェ、以下同)やファビアノ・アウヴェス・デ・ソウザ(ペカ)ら、リーダー格だが地位を狙う構成員殺害を命じたジルベルト・アパレシド・ドス・サントス(フミニョ)は、マルコ・ウイリアンス・H・カマッショ(マルコラ)救出作戦にも参加した大物で、マルコラ以上の財力を有すという。
 国際的な麻薬取引の収益は、コカイン1キロあたり、欧州で2万5千ドル、中国で10万ドルとされ、購入から販売までを統括する事で、従来以上の財力を持ち、武器販売でも勢力を伸ばす事は間違いがない。
 ガキヤ氏の動ける範囲はサンパウロ州のみだが、PCCはもはや国際組織で、構成員数や動かす金の額もコロンビアなどの組織を凌ぐという。同氏の願いは、警察と検察が一体化し、全国規模でPCCと対峙出来る時が来る事だ。