パラナ民族舞踊祭で日舞披露=繊細な所作で日本女性の心情表現=花柳 龍千多=「練習の成果出し切った」

おどり会による「花の舞扇」

おどり会による「花の舞扇」

 パラナ州都クリチバ市のグアイーラ劇場で開催された『第57回パラナ民族芸能祭』で11日夜、クリチバ日伯文化援護協会による日本伝統芸能の公演が行われた。同祭は今月1日から12日までの開期中、各国の芸能ショーが行われる。同文協もそのうちの一つとして参加し、パラナ州を中心に10団体200人が出演し、日本舞踊、和太鼓、民謡、コーラス、琉球舞踊、エイサーなど20演目を披露した。1千人以上が来場し、会場から大きな拍手が送られるなか幕を閉じた。

 公演は午後8時半、若葉太鼓による日本移民110周年記念曲「絆」で幕を開けた。若者約30人による迫力ある演奏に「セイヤ」「ソイヤー」などの掛け声が加わり、会場は一気に和の雰囲気になった。
 同文協おどり会は5演目を披露し、「花の舞扇」では顔を白塗りし、黒や紫の艶やかな着物と結髪のかつらを身につけた10人が登場した。首の角度や、まぶたの開き具合まで意識した繊細な動きで、恋を諦めて踊りの道を選んだ女性の心情を表現した。
 一方、「おとこの潮路」では3人がハチマキにはっぴ姿の漁師になって、「君のためにもゆかねばならぬ」と涙を呑んで海に出る日本男児の生き様を踊った。袖をまくって力強さを、夕陽を見つめて憂いを表すなど、物語性のある振り付けが随所にちりばめられており、観客を楽しませた。
 メンバーの平均年齢が83歳の民舞愛好会は、9人が手製の空色の着物で踊った。演目「祝いづくし」は扇子で顔を隠すなど茶目っ気のある振り付けもありながら、日本舞踊ならではの床を擦るような足運びによる上品さが光った。
 後半、おどり会は移民110周年を記念して「さくらさくら」を披露した。舞台の両脇に高さ約2メートルの桜を据え、背景をピンクに照らす演出で13人が踊った。振り付けには「日本女性の所作」が多分に取り入れられていて、口元に袖を持っていったり、膝を少し下げて客席を振り向いたり、控えめでしとやかな美しさを湛えていた。
 公演の締めくくりは出演者全員による「炭坑節」。民謡歌手の歌声、和太鼓、三味線、尺八の演奏を中心に囲むように踊り、夏祭りムード一色に。最後は移民110周年を記念した横断幕が掲げられ、大盛り上がりのうちに大団円を迎えた。
 「おとこの潮路」を踊ったおどり会の石田雅子さん(65、秋田県)は、「失敗しないか不安だったけど、本番では気持ちよく踊ることができた」と気持ちよさそうに笑顔で汗をぬぐった。26歳のときに渡伯し、子育てを終えてから日本舞踊を習い始めた。「みんなと練習するのがなにより楽しい。おしゃべりばかりだけど、やるときはやる。メリハリがいいわね」と話した。
 おどり会、民舞愛好会、生長の家踊り部の指導に指導に当たった花柳龍千多さんは「みんな1年間の成果を出し切って良くできてた。演目は歌謡曲が中心だけど、来年はさらに古典のアレンジを取り入れていきたい」と力強く語った。