トラック事故現場で奇跡の誕生=子宮破裂で母親死亡も子供は無事

 26日、サンパウロ州内陸部カジャチ市を走るレジス・ビテンコート道517キロ地点で、木材を積んだトラックが横転し、助手席から放り出された妊婦を積荷の木材が直撃。腹部が裂け、子宮破裂が起きたために胎児が生まれたが、母親は死亡という事故が起きた。
 トラックの運転手によると、妊婦は見も知らぬ赤の他人で、パラナ州クリチバ市に近いサンジョゼ・ドス・ピニャイス市の国道116号線沿いのガソリンスタンドで、「乗せてくれ」と頼まれたという。
 事故が起きたのは、同市から約100キロ走った時点で、ハンドルを失い、車線をはみ出したところでトラックが横転。妊婦が路面に投げ出された上に、積荷の木材がなだれ落ち、妊婦を直撃したという。
 通報を聞いて駆けつけた救急医は、先に到着していた救急隊員らが運転手を救助したのを確認後、木材の下敷きになった妊婦の死亡を確認しようとした時、赤ん坊の泣き声を聞いたという。
 救急隊員らが大急ぎで木材を取り除いてみたところ、木材に直撃されて子宮破裂などを起こした母親の内蔵に絡み合うようにして泣いている女児が見つかった。
 母親の遺体は木材の直撃で腹部が裂け、遺体の一部は切断された状態にもなっていた。救急医によると、腹部が裂けた事で胎児が無理やり押し出されたらしく、顔や体は木材で出来たと思われる擦り傷だらけだったが、へその緒を切り、必要な処置を施した後に産院に運んだという。
 ピラケーラ・アスー市の産院に着いた赤ん坊は観察のため、集中治療室に入れられたが、事故に伴う誕生というアクシデントにも関わらず、予後は順調で、30日には退院許可が出た。
 事故後の調査で、死亡した妊婦はサンジョゼ・ドス・ピニャイス市在住のイングリジ・イレネ・リベイロさんで、30日に21歳になるはずだった事が判明した。
 イングリジさんの両親によると、イングリジさんは無断で出かけたりする事はない人で、何故、サンパウロ行きのトラックに乗せてもらったのかはわからないという。
 赤ちゃんの父親に当たる男性はサンタカタリーナ州に住んでおり、退院した赤ちゃんはイングリジさんの母親が引き取りに行った。
 イングリジさんの葬儀は30日にサンジョゼ・ドス・ピニャイス市の墓地で行われ、同日の午後4時半に埋葬されるはずだったが、赤ちゃんを引き取りに行った母親がその時間までに戻れないため、埋葬は31日朝8時半に延期された。
 病院のスタッフ達は赤ちゃんの事をジオヴァナと呼んでいたが、イングリジさんの家族は、ジェニフェルと名づけるつもりだという。
 事故現場で生まれた赤ちゃんを最初に取り上げた救急医は、救急隊が着くまで生きながらえていた事や、後遺症は何も残らないと思われる事も含め、「この子は軌跡の子に他ならない」と息を詰まらせた。(27、30日付G1サイトより)