《ブラジル》金融教育普及の道はまだ遠く=教員の育成がカギ

 ブラジルの初等教育(6~14歳が対象、日本の小中学校)では、昨年12月に金融教育が義務付けられた。近い将来には、中等教育(15~18歳対象、日本の高等学校)のカリキュラムにも入る事となる。
 しかし、その実態を見ると、国内の多くの学校ではまだ金融教育の授業は行われておらず、多くの教員は金融教育を行うためのトレーニングさえ受けていない。
 金融教育の専門家は、「金融教育が広まらない事で損をしているのは、他ならぬ子供たちだ。将来、健全な財政管理が出来るような大人になるには、子供の内に支出を管理することを学ぶ事が本質的に大切だ」と語る。
 地方別に見た場合、北部には、国内全体の金融教育導入校の33%が集中している。中西部や北東部は各々、7%と8%で、導入率が低い。北部の導入率の高さは、トカンチンス州が金融教育普及モデル実験州に選ばれたことが影響している。一般的に所得が高く、教育レベルも高い南部には32%、南東部には20%が集っている。
 経済開発協力機構(OECD)が昨年5月に発表した学習到達度調査(PISA)の中では、15カ国の金融教育の充実度が調べられた。その中でブラジルは最下位だった。
 ブラジル人生徒の53%は「金融に関する最低限の知識がない」とされた。これは38%だったチリ、48%だったペルーよりも酷い結果だ。
 また、ブラジル人生徒の中で「高い金融知識を持っている」と評価されたのは、全体の僅か3%に過ぎなかった。関係当局も何もせず手をこまねいていたわけではないが、金融教育充実への道のりは他の国々に大きく遅れをとっている。
 ブラジルで金融教育が普及しないのは、教員、保護者も含めた学校界隈で、金融教育を重視する習慣が根付いていない事が原因だ。
 ブラジル金融教育協会(AEF)のクラウジア・フォルチ監督官は、「教師たち自身、一市民として稼ぎも悪く、支出管理も悪い」と金融教育が拡がらない要因を指摘している。
 南部リオ・グランデ・ド・スル州バジェ市の教育局長アドリアーナ・ララ氏は、「教育、医療、食事、レジャーなど、家庭の中で何にお金を使うかを決める時に子供が果たす役割は大きい。だからこそ、子供を教育する事で、ブラジル人家庭の消費意識をより健全なものにしていきたい」と語っている。(1日付エスタード紙より)