国境麻薬密輸団一味に大打撃=オベラル上議「統治が難しい国」=15日にベニテス新大統領就任=パラグァイ在住  坂本邦雄

15日に就任予定のマリオ・アブド・ベニテス次期大統領(Kremlin.ru, via Wikimedia Commons)

15日に就任予定のマリオ・アブド・ベニテス次期大統領(Kremlin.ru, via Wikimedia Commons)

 カルテス政権の退陣を間近にし、次期アブド・ベニテス新政権の就任(8月15日)をひかえての現象なのかは分からないが、最近Senad(国家麻薬取締局及び検察局)は、ウィルソン・ルベン・カセレス・ゴンサレスとウィルソン・ダリオ・カセレス・ゴンサレス(この者は元警察官出身)の双子兄弟の捜査に優先的に取組んだ。

 その結果、去る1日(水)にカニンデジュ県都サルト・デル・グアイラ市(ブラジルセッテケーダスの対岸)において、1元軍人、1元警察官、2闇金融容疑者と1地方検事補佐官その他8人の麻薬闇取引きの一味を検挙し、強力な麻薬密輸組織の解体に決定的な打撃を与えた。

 なお、この際に16トンものマリフアーナ、各種武器、快速舟艇スピードボート、車両等の押収も並行して行われた。

 マリフアーナ16トンの大型密輸の首領格はカセレス・ゴンサレス双子兄弟(31歳)で、生産地より麻薬製品を、パラナ河上のサルト・デル・グアイラ市の船着場に近い税関倉庫への搬入作業の担当責任者であった。

 ちなみにその双子の一人、ウィルソン・ダリオはかつて2008年に、ペドロ・フアン・カバリェーロ市で、警察の下士官だった頃に、同じく複数の罪状で捜査中だった、同僚ハイメ・ホエル・アジャラ・ベニテス(36)と共に、その頃は未だ制服の両者は、ブラジル側の隣接都市ポンタ・ポラン市で、盗んだばかりの乗用車で移動中に逮捕された経験がある。

 なお、二人はその翌年520キロのマリフアーナを輸送中に、カニンデジュ県、コルプス・クリスティ町で拘束された。

 しかし、すぐに釈放され、ハイメ・ホエル・アジャラ・ベニテスは、同じコルプス・クリスティ町で、19歳の異母兄弟のアデリオ・アダルベルト・ゴメスと、2011年に新たに伯父殺害の事件を起こした。

 この両人は、結局2012年に逮捕はされたが、驚く事に正に無実のごとく、新たに自由の身となり、2013年にはアルトパラナとカニンデジュ県境のイタキリで、マリフアーナ栽培の共犯者5人を暗殺し、再びお尋ね者となった。

 この、五重の殺人罪で2014年に両犯人は拘留され、アデリオは30年の禁固刑を宣せられたが、一方異母兄のハイメ・ホエルは別で、公判前に釈放され今では行方不明である。

 ただし、Senad=麻薬取締局がサルト・デル・グアイラ市で壊滅した、麻薬密輸団一味の捜査名簿中に、ウィルソン・ルベンとウィルソン・ダリオ・カセレス・ゴンサレス双子兄弟との密接な関係がある故に、ハイメはリストアップされている。

 しかして、同双子兄弟は2015年にアルトパラナ県のミンガポラーの地で、フアン・アンヘル・マルティネス・ヅァルテと同乗の車で、逮捕された事に触れければならない。

 それは、カツゥエテーのスダメリス銀行支店で、8億ガラニーの強奪を犯した直後の事であった。

 この事件で、当初捜索はされたが、最終的に又もや3人とも放免された。

 ところが、フアン・アンヘル・マルティネス・ヅァルテの釈放は長くは続かず、サルト・デル・グアイラ市近くの、従兄弟フラビアノ・ヒメネスとその息子フラビオ・Jr・ヒメネス・スパイニの牧場「ニャ・エウヘニア」の別荘において、184キロのマリフアーナ所持の廉で再逮捕された。

 一方、この親子二人は、先日の水曜日に一挙に検挙された8人に加わる麻薬密輸団の賄賂金融容疑メンバーで、Senad国家麻薬取締局の機密捜索班(SIU)は、ブラジル側マフィア組織とスピードボートを使っての、マリフアーナ等の密輸組織を構成する重要な頭目で、パラグァイの殆どの関係当局者を収賄していたものと看做している。

 

▼マフィア擁護に高額の官憲収賄

 

 ちなみに、サルト・デル・グアイラ区域では、200万から1800万ガラニーの賄賂が日常、海軍の沿岸警備隊、警察、検事局及びSenad国家麻薬取締局それぞれの当局者に対して、マフィア行動擁護の為に支払われていた。

 これ等の詳細データーは、先述の去る水曜日(1日)、サルト・デル・グアイラでの立入検査で押収された、麻薬密輸業者直筆の日記帳で判明したもので、唯一、その支払いは月間、或いは麻薬貨物の輸送の度毎に行われていたものかが、書き漏れているだけである。

 以上、各責任機関の当局者は収賄リストの内容が暴露された後、直ちにアスンションのそれぞれ中央本部へ予備審理の為に召喚された結果逮捕され、容疑者全員はタクンブーの刑務所へ送られ、監禁された。

 

▼統治困難な国

 

 ゴンサレス・マキ及びヅアルテ・フルトス両政権下で(2002~2007)文部文化大臣を務め、2008年の大統領総選挙に、パ国初の女性大統領を目指して立候補し、対抗馬ルーゴ元司教に惜敗した、現上院議員ブランカ・オベラル女史(61)は、出身県コンセプションのオルケタ町で、去る7月29日()に、赤党コロラド・アニェテテ派(純粋赤党)の講演会において、「パラグァイの政界は、目下実勢権力の横暴が罷り通っていて、ガバナンス(=統治)が難しい国だ」と述べた。

 つまり、共通の福祉を追求する真の政治が不在で、現在の社会的不平等な「格差」「二極分化」が広まり、国は何百万もの貧困者と少数派の富裕者からなる社会構成になっていて、今までの輪番政府のいずれもが、充分に機能しなかったのが問題だとは、オベラル上院議員の厳しい意見である。

 そして、貧困は蔓延する腐敗・汚職によって日毎に増長し、公共機関の首長は誰彼を問わず無責任で、厚顔あつかまししくも政府の資産で私腹を肥やすのに余念がない。

 そのような政治環境のところ、次期政権を待つのは、無数のマフィア絡みの問題だが、来たる15日に就任するマリト大統領は実に挑戦の決意でいるが、ブランカ・オベラル上議は「ここは心よりグッドラック幸運を祈りたい」と締め括った。