いよいよ、選挙運動が開始!=一体どうなる?大統領選挙=誰が〃未来の大国〃のトップに=サンパウロ市在住=駒形秀雄

主要大統領候補一覧

主要大統領候補一覧

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 この国のこれからの命運を決めかねない総選挙、中でも大統領選挙は重要です。その公式の選挙運動が今日16日から始まります。

 立候補届け出は15日に締め切られ、「我こそは」というツワモノが、正・副13組参加となりました。今日から正式に選挙文書の配布や街頭宣伝も許可されるので、街中も騒がしくなることでしょう。

 この〃未来の大国〃のトップにはどのような人が名乗りを挙げているのか、汚職の泥にまみれたような旧い政治を振り払って、新しい強力な政治家が台頭して来るのか!

 この地で生きようと決めた私達日本人も無関心では居られません。先ずは開戦前の状況、これからの方向など、皆様と一緒にチェックしてみましょう。

 

ゴリ押しルーラ、どこへ行く

 

▼ルーラは東北の貧しい農村に生まれ、子供の頃に家族と共にサンパウロへ出てきました。その後幾つかの仕事を経て、職場の労働者代表となり、何回かの落選にもめげず、遂に4回目でその目的をはたし大統領になった人です。

 社会の下層で冷や飯を食っている人たちの気持ちを理解して、その人たちと同じ言葉で「大資本家と闘って我々の生活を良くして見せるぞ」と訴え続けたので、庶民階級には絶対の支持があります。

 不正行為などで訴えられ、2回も有罪判決を受けて拘留されても、この支持は変わりません。その人気度調査では常に30%前後を確保、断然トップです。

 この貴重な支持層を無にすることはないと考えたのか、所属のPT党では服役中のルーラを大統領候補に推しています。「2審で有罪裁定を受けた者は公職には就けない」という裁判所の判断があるに拘わらず、です。

 まるで街中の交差点を渡たる時、「信号赤では止まりなさい」という規則があるのに「皆で渡れば大丈夫」と渡りはじめている感じです。このルーラのゴリ押し立候補届け出に委員会がどう対処するか? 

 一旦登録申請を受けて置いて、後で8月末までに「それはダメ」と却下するのか?(あるいは受け付けるのか?) 何しろ大物の去就なので人々の気を揉ませています。

 ルーラ側は、その立候補が否定された場合も想定して次の一手も考えています。それはサンパウロ元市長だったハダジを正、共産党PCdoBのマヌエラを副としての組み合わせです。

 ハダジはアラブ系二世で若い。中央政界のゴタゴタには直接からんでいないので有利です。問題はルーラへの30%近い人気をそのまま引き継げるか?です。識者の見るところ「ルーラの立候補はまず否定される。しかしその票がそのままハダジに流れることもない」です。

▼マリナはアマゾンのジャングルの中で育ち、子供時代、学校へも行けないほど苦境を経験しています。環境、自然を重んじ、元々ルーラと同じPT党所属だったので、この「大衆票」を引き寄せたいところですが、これも中々難しいようです。それに何回かの大病を経た細身の体の外見などから、「こんな女性がブラジル代表を務められるのか?」と危惧を抱かせるところが弱点に思われます。

▼もう一人、PTルーラの票を引き寄せたい人がいます。PDT党のシーロ・ゴメスです。

 シーロは財務相、セアラ州知事などの実績もあり、理路整然とした話しぶりなど魅力があります。庶民よりの政見を持ち、左派系のルーラ票を取り込むのに適しています。

 ただ、シーロは余り相手の立場などを勘案せず、自分の思ったところをズバリと言うので、多種多様な人を惹きつける包容力に疑問が持たれます。今回もPT党との合意も出来ず、セントロンの支持も取り付けられず、結局自党の力だけを頼りの孤独の闘いになりそうです。

 

布陣は万全・アルキミン

 

▼永年左派のPTと対立して来たのが保守本流―PSDB党です。その党代表で満を持して出陣して来たのが前サンパウロ州知事アルキミンです。

 アルキミンは議員、州知事などを問題も起こさずこなして来ました。実行する政策もただの人気取りに片寄らず、州全体の経済発展を画したものでした。その穏やかな風貌、言動からも穏健を好む経済界の支持を受けそうです。

 その深謀遠慮なやり方は今回の選挙準備にも発揮され中道5党からなるセントロンとの連携に成功しました。昔の日本の合戦談で言えば、有力武将を味方につけて、合戦の前に万全の布陣を敷いた徳川家康を想起させます。この連携でアルキミンは公的TV宣伝時間でもトップの5分33秒を確保し、各30秒台のマリナ、シーロ、アルヴァロなどに比べ大いに優位に立っています。

▼この間まで財務大臣を務め、経済界、取り分け銀行筋の支持を集めていたのがメイレーレスです。メイレーレスは永年銀行畑で働き、財務に明るく、国外にも名の知られた人です。ただ玄人好みで国民一般をパッと沸き立たせるような〃華〃がありません。支持党MDBがテーメル大統領のもと、あまり支持者も増えないのが難点かもしれません。

▼アルヴァロ・ジアスは元パラナ州知事で現在上院でも存在感を示しています。政治家の汚職行為を厳しく指弾しており、その関係でも支持を集めています。しかし、如何せん出身党が弱小党でTV放送時間もなく、どこまでその良さを分かって貰えるか、でしょう。

▼全体主義的な言動で知られるボルソナーロは軍人出身で、厳格、特異な言動でも知られています。生まれたのはカンピーナス(SP)ですが、レゼンデ(RIO)の軍学校に入って以来、リオ州を活動基盤としてきました。

 今までの旧政治家の恥知らず、不正な行為にウンザリした一般国民の意を受け、「政治家を含む不正者は全部牢屋に叩きこめ」「今のようなダラダラ政治を止め、上の命令が下に十分に届くようにしないとこの国は良くならない」と強面の言動で注目、支持を集めています。

 国民の人気度でも15%近くあり、ルーラに次ぐ2位につけています。ただ、この態度は「良識派」には評価されず、支持党も自党だけ。TV宣伝時間もほぼ無しです。

 

次のブラジルを引っ張る人は

 

 以上、ブラジル大統領候補13氏の中、8氏のミニ紹介を致しました。紹介されなかった候補の中には「サンパウロなどの大都市には空きビルが沢山ある。これを政府が接収して『家無し市民』用大衆アパートにせよ」などと主張している候補も居ります。これでは先日火災を起こして崩壊したタテ型ファべーラの再現で、何とも感心出来ません。

 ここまでお読み下さった皆さんは一体、誰が大統領になったらこのブラジルを良くして行けるとお思いですか?

 候補同士の票の取り合いや、他者の批判だけでなく、本格的な政策論議、主張を知りたいですね。例えば「私が大統領になったら今、1300万人も居る失業者に職を与える」とか「この泥棒、殺人の多さはどうだ。私が政治改革をして、住民が安心して暮らせるような国にしてみせる」とか国民が希望を持てるような政策を発表し、論争して貰いたいですね。

 ブラジルの今度の選挙での有権者は1億5千万人です。これは日本の全人口より多いので投票日の10月7日までの1カ月間程度でこれだけの人人に自分の主張を理解して貰うのは至難の業でしょう。

 大きな党とか団体組織で支持を固めるとか、インターネット、TVなどマスコミの活用が不可欠と思われます。

 救世主ルーラ(?)が抜けたこの選挙、ドングリの背比べの混戦を抜け出して、次のブラジルを引っ張って呉れるのは誰でしょう。期待は膨らみます。

 長くなりますので、今回は「状況報告」に止めます。状況が煮詰まる投票日前にでもまた、レポート出来ればと存じます。(hhkomagata @gmail.com)