ポルト・アレグレ=日本祭り、過去最高の9万人=地域に愛される一大イベントに(下)=アニメイベントで若者呼び込む

かるたを紹介するアウドレイさん(右)と説明を聞くビッカさん

かるたを紹介するアウドレイさん(右)と説明を聞くビッカさん

 校舎の各教室では書道や生花、切り絵、着物の着付けなどのワークショップや展示が行われた。歌がるたを紹介していたクリスチャン・アウドレイさん(23)は競技かるたを題材にしたアニメ「ちはやふる」を観て関心を持ち、同アニメファンの友人らと研究会を立ち上げた。

 日本語は話せないが、百人一首をネットで調べて勉強し札を読めるようになった。「札は日本から取り寄せた。かるたはブラジルで全然知られていないので、やる人を増やしたい」と言う。彼女から説明を受けたサムライ姿のブルーナ・ビッカさん(24)は「難しそうだけど興味深いわ」と言いながらかるた札をじっと見つめていた。

 日本祭りの来場者には体育館で行われるアニメフェスタ「ANIME BUZZ」を目当てにくる若者も多く、会場にはたくさんのコスプレイヤーが練り歩いていた。

 体育館にはアニメやマンガ関連の商品を扱う出店が50近く軒を連ね、特設ステージではアニメソングのカラオケや韓流アイドルのダンスが披露された。3月に別会場で単独開催したときには2日間で2万人を動員。「ANIME BUZZ」主催のラファエル・エストランさん(27)は「より立地の良い軍警察学校ではさらに集客できているはず」と話す。

 女子高生の制服を着たナタリア・ホドリゲス・カルバーリョさん(29)は、忍者や一角獣のキャラクターに扮した友人らと遊びにきた。「ここはサンパウロのようにアニメやコスプレのイベントがたくさんあるわけじゃないから、日本祭りが毎年の楽しみ。明日は魔法少女のコスプレで来るわ」と話した。

 ただ、『ANIME BUZZ』を目的に来場した若者の多くは伝統芸能を見せる校舎には立ち寄らない。逆に、アニメ中心の体育館には中高年者の姿はない。そのため校舎のメインステージでもコスプレショーを行い、アニメファンを呼び込んでいる。若者以外にもコスプレを見てもらうのも狙いだ。樋渡実行委員は「この祭りは日本の伝統的な面と現代的な面が共存しているのが特徴。多くの人に両方を体験してほしい」と話した。(終わり、山縣陸人記者)

 

 

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 ポルト・アレグレの日本祭りで日本語学校は焼きそばを提供した。麺は食品製造会社のアルファ、醤油はキッコーマン、皿や箸も市内の専門業者から寄付してもらった。しかも麺の調理はデリバリー中華の「China in Box」が担ってくれた。販売収益は建物の維持費や日本語教師の給料に充てられる。校長の大澤さんは「日本語学校を助けよう、日本祭りを盛り上げようという思いでやってくれている。本当にありがたいです」と感謝しきれない様子で話していた。

     ◎

 樋渡実行委員は「日本祭りが始まった当初は『アニメやコスプレは日本の伝統とかけ離れている』とし、『ANIME BUZZ』を一緒に開催することに反対する声があった。でも来場者が多ければそれだけ出店で買う人が増えて助かる。日系社会を盛り上げるためにも一緒に開催する意義は大きい」と説得して併設することになったという。同祭にはアニメのおかげで若者が集まっている。「たかがアニメ・漫画」と馬鹿にせず、地方文協活性化のよき手段として活用してみたら?