ベネズエラ難民=ロライマ州で軍が治安維持へ=知事は「不十分」と不満声明

28日のテメル大統領(Marco Correa PR)

28日のテメル大統領(Marco Correa PR)

 【既報関連】ミシェル・テメル大統領は28日、ベネズエラ難民大量流入により混乱が続いているブラジル北部ロライマ州で、軍が治安維持活動をすることを特別に認める大統領令に署名したと28、29日付現地紙、ニュースサイトが報じている。

 この大統領令は、29日から9月12日までの期間限定だが、延長もありうる。今月18日に国境の街パカライマで発生した、ブラジル人による難民収容施設の襲撃事件から10日経っての発令となった。大統領は「ロライマ州に住む国民、助けを求めてきた隣国人の安全を保障することが目的」と語った。

 軍は治安保障法(GLO)に基づいて行動する。活動場所は主に国境エリア、州内幹線道路、州都ボア・ヴィスタ市など。州都ボア・ヴィスタ市駐屯の陸軍兵士3千人に警察権が与えられ、治安維持活動にあたる。GLOはリオ州に出された直接統治令より穏便な措置で、行政機関を動かす権限はない。他州配備の軍が呼ばれることはない。

 セルジオ・エチゴエン安全保障局長は、「直接統治令の発令は考慮に入らなかった。我々は、他機関の権限を侵犯することなく、段階的に行動する」と語った。

 エリゼウ・パジーリャ官房長官は「今は特別予算を組んでも解決策にならない」と語り、大統領令に直接的な資金援助は含まれないと強調した。

 大統領令発令の後、スエリー・カンポス州知事(進歩党・PP)は、GLO発令は昨年8月から求めていたと明かした上、「ベネズエラ人の大量流入が州内に引き起こしている影響を緩和するためには不十分」との声明文を発表した。

 2015年以来、既に12万人以上の同国人がブラジルに逃げてきた。その半数はブラジルに留まり、大半が同州内に滞在する。治安、医療、教育面で移民受け入れはもう限界と、カンポス知事は再三SOSを出してきた。

 現地では「増えすぎたベネズエラ人が自分たちの生活を脅かす」との不安感に駆られたブラジル人による移民排斥の動きも起きている。

 

他の隣国も対応に苦慮

 

 ベネズエラ難民流入問題を抱えるのはブラジルだけではない。むしろ、コロンビア(44万2千人)、エクアドル(54万7千人)、ペルー(40万人)(国連、各国報道機関調べ)と比較しても、ブラジルの12万人超は一番少ない。これらを全て足しても150万人ほどだが、全国民の7%にあたる230万人のベネズエラ人が隣国に脱出したと国連は見ている。

 ペルーのマルティン・ヴィスカラ大統領は28日に、ベネズエラ人流入により保健システムに差し迫った危機が発生しているとして、同国北部に非常事態宣言を出した。