《リオ市》国立博物館火災続報=消火栓水ナシ、火災報知機故障=ずさんな管理体制明らかに=削減一方の防災、修繕予算

国立博物館の建物の正面は残ったが、内部は屋根、床板など全て焼け落ちている。(Tomaz Silva / Agencia Brasil)

国立博物館の建物の正面は残ったが、内部は屋根、床板など全て焼け落ちている。(Tomaz Silva / Agencia Brasil)

【既報関連】2日夜に発生した大火災で、リオ市の国立博物館が、2千万点といわれる貴重な所蔵品のほとんどと共に全焼した。火災から2日後の各紙は、屋根も床板も焼け落ち、部屋を分ける内壁と外壁だけになった「築200年の元皇帝の歴史的建造物」の衝撃的な写真を大きく掲載している。

 同博物館は防火扉もスプリンクラーもない上、火災報知機は故障で機能せず、消火栓には水がないという有様だった。

 クリスチアーナ・セレージョ副館長は「焼けずに残ったのは所蔵品のせいぜい1割程度ではないか」とし、「火事の危険性を訴えてきたのに、予算も足りず、全ての手続きに時間がかかって…」とやり場のない怒りを浮かべた。

 国立博物館は今年、防災、防犯、修繕関連費を一切かけていなかった。最近の4年間を見ても、築200年の建築物にしては同関係費用が驚くほど低かった。15年~17年にかけての防災関連物資の購入費は、わずか1万6971レアル、修繕費は25万236レアルだった。

 上下両院合同予算委員会のデータでも、連邦政府から国立博物館へ回された予算は13年の130万レアルから、17年の66万5千レアルへと、ほぼ半減している。今年8月までの国立博物館関連予算は、約5万2千レアルの奨学金と、約4万6千レアルの諸経費だった。

 国立博物館はリオ連邦大学(UFRJ)の管理下にあり、国からの資金は博物館には直接回っていなかったと、教育省はしている。UFRJ自体も予算不足で、国からの資金を国立博物館の維持費に回せなかったとの声も内部からは出ている。

 教育省は3日、外壁と内壁だけが残った国立博物館の緊急補修工事のために1千万レアルの予算を出す事を発表。建物の改修だけで1500万レアルがかかるとされており、500万レアルは工事の進捗と共にあてられる予定だ。

 火災原因に関しては、小型バルーンの墜落か、電気系統のショートの可能性が指摘されているが、詳しい事はまだわかっていない。火災原因の調査は連邦警察が担当することとなった。

 さらに、大統領選を1カ月後に控えるタイミングで火事が発生したことから、複数の政治家や大統領候補者が、一昨年成立の歳出上限法をやり玉に挙げて、「教育関連予算を削りすぎた現政権に、火事の責任がある」との発言を行っている。

 ブラジルでは以前から、博物館や学術機関を保護していく意識が低く、2010年のブタンタン研究所、13年のラテン・アメリカ記念館、15年のポルトガル語博物館など、火災の被害が続いている。