《ブラジル刑務所問題》暴動発生から約2年も、「改善程遠い」との報告書発表=囚人への暴行も未だ蔓延

昨年1月にマナウスの刑務所制圧に入った軍警(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

昨年1月にマナウスの刑務所制圧に入った軍警(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 昨年1月にブラジル北部、北東部3州の刑務所で大規模暴動が発生し、合計126人の囚人が死亡してからほぼ2年が経ったが、刑務所の状況は改善には程遠いと、28日付現地紙が報じた。
 暴動が起きたアマゾナス州マナウス市、ロライマ州ボア・ビスタ市、リオ・グランデ・ド・ノルテ州ナタール市近郊の刑務所は、州政府が制御できているとは言い難い。ナタール市近郊のアルカスス刑務所では、看守から囚人への暴力も報告されている。
 人権省作成の報告書「拷問撲滅、または予防のための国家的メカニズム」によると、3州は、囚人の人権保護、囚人暴動の責任者特定、遺族への賠償などを含む185の勧告を受けたが、5%しか実行していない。
 監査官らは事件直後だけでなく、今年に入ってからも刑務所の視察を行った上で、多くの問題点を指摘している。
 26人の死者を出したアルカスス刑務所では看守が囚人に身体的、精神的な苦痛を与えており、その様子はイラクのフセイン政権時代に反政府勢力を収容していたアブグレイブ刑務所に似ているとまで形容された。アルカスス刑務所では、反抗予防の名目で手や指を傷つけられた例もあった。
 リオ・グランデ・ド・ノルテ州では、暴動発生時には囚人として収容されていたはずなのに、その後、「死亡」とも「逃亡」とも記録されていない「行方不明者」が15人いる。「逃亡」に区分けされたが、根拠が明らかでない17人を含めると、「行方不明者」の数は32人に達する可能性がある。ロライマ州の刑務所での「行方不明者」は7人だ。
 報告書には、「大規模暴動発生後、場当たり的な措置が繰り返された。被害者、遺族の抱える問題を解決するよりも、責任を回避する事に当局は労力を費やしてきた」と断じている。
 アマゾナス州では既に200人以上が暴動発生の責任を問われ、起訴されているが、ロライマ州とリオ・グランデ・ド・ノルテ州では事件解明の動きが遅い。報告書では、「両州は、刑務所管理機構側に事件に繋がる事態を招いた責任を問うような捜査がされていない」とされている。
 こうした状況にもかかわらず、国家予算から回された巨額の刑務所管理費も効果的に使用されていない現実がある。
 連邦政府は2016年12月に、刑務所管理、施設改善費として4400万レアルずつを各州に回したが、リオ・グランデ・ド・ノルテ州は17%、アマゾナス州は14・8%、ロライマ州は2・8%しか使っていない。2017年は2100万レアルずつが回されたが、リオ・グランデ・ド・ノルテ州はその4・5%しか使っておらず、アマゾナス、ロライマ両州はその予算を一切使っていない。
 地元紙による問いかけに、アマゾナス州は、刑務所設備は改善されており、定期的に監査もしているとした。ロライマ州、リオ・グランデ・ド・ノルテ州はコメントを避けた。