安倍総理=パラグァイを公式初訪問=「1万日系人の現地貢献は誇り」=超新鋭浚渫船建造資金を援助

外交関係樹立100周年記念ロゴを発表する両首脳(首相官邸HP)

外交関係樹立100周年記念ロゴを発表する両首脳(首相官邸HP)

 【パラグァイ発=坂本邦雄さん特別寄稿】11月30日(金)から12月1日(土)にかけて、亜国ブエノスアイレス市で開催されたG20サミット(首脳会議)に参加した安部晋三首相は、翌日曜日(2日)夕刻に帰国の途上、先にウルグァイに立ち寄った後、パラグァイに短時間ながら公式訪問した。

 これまでに、1978年に当時は未だ皇太子同妃両殿下だった今上天皇皇后両陛下、次いで1986年のパラグァイ日本人移住50周年記念祭に来られた常陸宮同妃両殿下、2006年には同じく70周年記念祭に秋篠宮殿下をお迎えし、更に2006年9月には秋篠宮殿下の長女、眞子内親王殿下のご来訪の栄誉を得たパラグァイ日系人社会だが、内閣総理大臣の訪問は過去初めて。パラグァイ政府当局も歴史的な慶事として受け止めている。
 パラグァイ電撃訪問について、当地ABC及びそのほか複数の報道機関の取材に応えた安倍総理は、「パラグァイにおける約1万人の日系人の、各分野での幾多にわたる尊い貢献を、日本人として大いに誇りに思う」とガラニー語で先ず初めに挨拶してから語った。
 「日パ両国は、地理的には対蹠点に位置し、地球の裏側に在って、お互いに一番遠い国同士だが、パラグァイは昔から日本人を温かく受け入れて来た、世界で最も親日的な国の一つで、来年(2019)は日パ友好親善条約樹立100周年を迎える、大きな節目の年に当たる。過去日本政府は有償無償、または技術援助で各国中、断トツの記録を保持するが、これからも更なる経済や文化交流の強化に尽力して行きたい」と安部首相は述べた。
 日系人の農業分野での貢献は蔬菜園芸や画期的な大豆、小麦、トウモロコシ等の生産向上と促進が特に挙げられる。これ等の穀物の大量輸送に大いに寄与しているのが近年頓に発達した河川水運事業である。
 この中には、日本の進出企業の常石造船所が有り、優秀なプッシャボートや平底バージの国産に大いに貢献していて、今やパラグァイはアメリカと中国に次いで、世界で第3位の河川水運大国にのし上った。
 問題はアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグァイとウルグァイに関係する「Hidrovía Paraná-Paraguay = パラナーパラグァイ河水路」の増減水期がどうであれ、年間を通じて永続航行性を保つ必要がある事だ。これは、北はブラジル、マット・グロッソ州のカセレス港を起点に、南はウルグァイのヌエバ・パルミラ港に至る延長3・302キロメートルの大国際水路だ。
 パラグァイに属する部分は約1千キロメートルだが、この区間の航行性の維持に、必要時にはアルゼンチン等の浚渫船の支援に依存している。
 そこで、今度は安倍総理の訪パを機会に、パラグァイへ最尖端造船技術による超新鋭浚渫船建造の資金2300万ユーロ(2610万米ドル相当)の無償援助をパラグァイの造船所に与え、日本人造船技師の指導の許に、技術移転の便宜も行う協定がマリオ・アブド・ベニテス大統領との間で、他の協力協定と共に調印された。
 本件に関し、ルイス・アルベルト・カスティグリオニ外相は、これで今後は、毎度パラグァイ河の航行難所の浚渫や改良に他国の世話にならないで済む様になると悦んだ発言をした。
 一方、駐パ石田直祐大使は、今後益々の両国友好関係の強化を約し、2025年に予定される万博開催候補地に大阪市を推したパラグァイの好意を謝した。

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 パラグアイ訪問前、ウルグアイに立ち寄り、現地日系社会と懇親を深めた安倍首相。ブラジルと同じく、ウルグアイも今年で日本人移住110周年を迎える。懇親会での挨拶で、安倍首相は、祖父・岸信介がリオからブエノスアイレスに向かうフライトでモンテビデオを経由した際、空港内で日系人から歓迎を受けたという逸話を披露。懇親会に出席していた日系人の一人に、奇遇にも、当時、岸信介を歓迎していた人が居たのだとか。