同じ「神のヨハネ」でも…

 最近の新聞紙上を騒がせている事の一つに、世界的な心霊治療家ジョアン・デ・デウスによる性犯罪の告発がある▼ゴイアス州検察局へのメールや電話は6カ国から500件以上。18日の家宅捜索では、同氏の自宅から40万レアル余りの現金と、本物や玩具の銃6丁、銃弾が押収された。警察は性犯罪の他、資金洗浄などについても捜査する▼それにしても、肉体的、精神的、霊的な問題を抱えた人を癒すべき人が、相手の弱さにつけいり、その人生まで破壊したのだから恐ろしい。裁判所が人身保護令適用を拒否した日に行われた家宅捜索で発見された火器と多額の現金は、事件の重大さを更に見せ付けた▼性犯罪は被害者が泣き寝入りする例が多く、性的暴力後に病気が悪化した人や、妊娠し、産もうと考えてで援助を求めたら、堕胎薬を渡された人もいる。女性にとって胎の実は愛おしく、その命を奪う事は殺人に他ならない。ジョアン・デ・デウスの罪状は強姦や宗教を隠れ蓑にした詐欺などで、殺人罪が加わるかは検察の判断次第だ▼一方、彼に癒された人や、彼に心酔していた人には信じ難い告発だろう。だが、名声や地位を得た人が心すべき事は富や地位への固執と堕落だ。クリスマスの時期故、「ユダヤ人の王誕生」と聞き、地位を失うのを恐れて町中の幼子を殺させたヘロデ王の話が聖書に出ているのを思い出す。処女懐胎という信じ難い出来事を信仰故に受け止めたマリア。彼女を受け容れ、キリスト誕生まで肉体関係を持つのを避けた夫ヨセフ(ポ語はジョアン)と、自分を頼ってきた人達を貶めた心霊治療家とは、同名だが雲泥の差。被害者や家族への慰めと癒しを願いたい。(み)