《ブラジル》高校生向け全国試験=貧困家庭の出身者に厳しい現実=上位5%には0・16%しか入れず=変えられないハンデ背負い

Enem受験に向けて勉強する生徒(参考画像・Suami Dias/GOVBA)

Enem受験に向けて勉強する生徒(参考画像・Suami Dias/GOVBA)

 2017年の国家高等教育試験(Enem)の結果の分析データによると、経済的条件が著しく低い受験者17万6千人の内、エリート大学への進学資格を得るに足る点数(上位5%の成績)を取ったのは、0・16%に当たる293人だけだった事がわかった。世帯間の経済格差が、子供の試験の成績にも影響を及ぼしている現実を、18日付エスタード紙が伝えている。
 Enemは高校の最終学年生や卒業生向けの全国的な学力試験で、一部の大学が入試そのものとして、または、入試にボーナス点を加算する資料として使用する。また、私立大学の奨学生選考などにも使われる。
 Enemの結果を分析したのは、ブラジリア大学(UnB)の公共経済学修士で、データサイエンティストのレオナルド・サレス氏だ。
 17年のEnemは460万人が受験した。サレス氏は130万人分のデータを集め、受験者の成績と経済的条件をグラフ化した。
 受験者の経済的環境を識別するために設定された条件は、「中等教育を公立校で受けた」「家に車、パソコン、インターネット環境、固定電話がない」「通った学校のインフラ条件が低かった」「世帯1人あたりの収入が3分の1最低賃以下」などだ。
 これらの条件に全て当てはまる、もしくは一つを除いて全て当てはまる受験者を「経済的条件が著しく低い」と定義した。そうした受験者17万6千人の内、293人(0・16%)だけが、Enemで上位5%の成績を収めたのだ。
 この、Enem成績上位5%のグループの内、「経済的条件が著しく低い」受験者は0・4%しかいなかった。また、成績上位5%の生徒の25%は、経済的条件が恵まれている家庭の出身者だった。
 経済状況に関係なく、全ての受験者の得点をグラフ化すると、1千点満点の試験で505点から510点を取った人が一番多く、3万3千人を占めた。だが、経済状況が著しく低い受験者に限定した場合のピークは460点から465点(6千人)だった。また、経済的条件が著しく低いのに成績上位5%に入った293人の過半数、154人はセアラー州出身だった。
 同州の公共教育は、識字率向上という極めて本質的なレベルからの改善を行うことで、他州の模範となっている。最新の基礎教育開発指数(Ideb)では、同州の中等公共教育のレベルは、サンパウロ州、ロンドニア州と共に、全体の4位タイだった。
 サンパウロ総合大学(USP)教育学部教授のオシマール・アラヴァルセ氏は、「試験の結果を『本人が努力したか否か』とだけ見るのは誤り。家庭が経済的に困窮していると、本人には学習意欲があっても、働いて家計を助けなくてはならなかったり、裕福な家庭の生徒が持っているような教材や学習環境が得られなかったりする。所得や母親の学歴といった家庭要因も、成績に影響する」と語っている。