JH「犬のための建築」展=犬種に合わせて設計、15点展示

展示中の「犬のための建築」

展示中の「犬のための建築」

 ジャパン・ハウス(マルセロ・アラウージョ館長)は『犬のための建築』展を今月19日から、同館の地上階、2階(Avenida Paulista, 52)で開催している。
 建築を犬の尺度から捉え直し、建築とデザインの新しい在り方を模索したもの。同展を手掛けた原研哉氏をはじめ、隈研吾氏や藤本壮介氏など名立たる建築家やデザイナーが設計した15点が展示される。
 一見、単なる犬小屋のように見えなくもない。だが、原氏は「冗談ではなく、建築家が大真面目に考えたもの」と胸を張る。設計にあたっては建築家が各々の犬種を想定し、大きさ、歩幅、習性等が反映されている。
 屋外スペースにも3点が設置されており、実際に犬を連れて遊ぶことができる。その他、展示されている全ての設計図はサイト上で一般公開されており、実際に制作することも可能だ。
 本展を共同企画した米投資会社Imprint Venture Labのジュリア・ファングさんは「犬小屋であれば著名な建築家が設計したものを自分の手で作れるとあって、実際に作っている人もいる」と話す。
 原氏は「犬は品種交配により人為的に作られ、人間の脇にいることを宿命付けられた動物。建築家の創造性を楽しむのみならず、人間がしてきたことを見つめ直したり、単なるペットの家として見ても面白い。色々な意味で楽しんでもらえれば」と期待を語った。
 なお、同展は4月7日まで。入場無料。

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 『犬のための建築』展では、犬種に応じて設計された15点が展示され、多種多様だ。ジュリアさんによれば「犬種によって、安心感を求めて包まれた閉鎖空間を好む犬もいれば、開放的な空間で色々な場所で遊びたいという犬もいる」とのこと。だが「実際に犬を遊ばせようとすると初めは怖がる。だが、遊び始めて買主が喜んでいるの見ると、もっと喜んでもらおうと一生懸命に遊ぶようになる」のだとか。犬種ごとの特徴や習性を考慮して設計されてはいるものの、最終的には買主との信頼関係が決め手?!
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 ジャパン・ハウス総合プロデューサーの原研哉氏によれば、「英ロンドン、米ロサンゼルスの来館者数もそれぞれ目標数値の6~8倍、1・2倍近くになっている」ので好調とのこと。原氏は、本来の目的である領土問題や、慰安婦問題などの政策発信については「この場で表現しても効果がない」と話し、「千数百年一つの国であり続けたことによる文化的蓄積は圧倒的なもので、日本文化の発信こそが最大の戦略。工業化社会の次の使命は、そういう文化をいかに未来資源に結びつけるかが重要」と力こぶし。とは言え、全館使用して展示する「千数百年分の文化的蓄積」が犬小屋だけとは、実態を伴っていないような気が…。