《ブラジル》ダム決壊事故続報=ブラジル全土で350万人が危険地域に?!=決壊の懸念あるダムのそばに居住=「こんなこと、ブラジル以外では考えられない」とドイツ人教授

事故から一週間、死者、行方不明者の数は合計350人を超えている(Ricardo Stuckert)

事故から一週間、死者、行方不明者の数は合計350人を超えている(Ricardo Stuckert)

 【既報関連】ミナス州ブルマジーニョの鉱滓ダム決壊事故から1週間が経過した1月31日、同日付現地紙が、「国内でダム決壊事故発生の危険がある市に住んでいる人は350万人に上る」と報じた。
 国家水資源庁(ANA)が17年末にまとめた報告書では、全国で2万4千基を超えるダムの内、45基が「事故の懸念あり」と評価された。45基のダムは13州、30余市に存在。これらの市の人口は総計350万人に上る。
 事故の懸念があるダムには、穴、ひび割れ、滞留物の漏れ、安全書類が存在しない、などの問題が見られた。
 ダム管理体制は一元化されておらず、全ての監査機関がANAにデータを送ったわけではないので、危険なダムの実数は45より多い可能性もある。
 事故の懸念があるダムを持つ市の内、最も人口が多いのは、カンポ・グランデ市(マット・グロッソ・ド・スル州)、カリアシカ市(エスピリト・サント州)、ペロタス市(リオ・グランデ・ド・スル州)だ。サンパウロ州にもアメリカーナ市、ピラポラ・ド・ボン・ジェズース市に危険なダムがある。ただし、「事故の懸念あり」とされてはいなかったブルマジーニョ市のダムが決壊したため、潜在的なリスクを抱えている国民の数は350万人より多い。
 15年11月のマリアーナでのダム決壊事故後、ミナス州議会には「ダムと居住地域の距離を最低10キロとする」との法案が提出されたが成立しなかった。ドイツ人のミナス州連邦大学地理学教授は、「ダムと居住地域がこんなに近いなんて、ブラジル以外では考えられない」としている。

幹部に届くか断罪の手?

 1月30日昼、オニキス・ロレンゾーニ官房長官は、「責任は誰かのCPFに届かなくてはいけない」との表現で、「責任の所在が曖昧にされずに、罪に問われなくてはいけない」という趣旨の発言をした。
 監査に関わった現場の職員だけでなく、企業や幹部も法的責任を問われうるが、企業の幹部が法廷で断罪されるのは簡単ではない。
 3年以上前に発生したマリアーナでのダム決壊事故でも、合計21人の企業幹部、経営審議会委員、職員らが殺人、環境犯罪、傷害などの罪に問われているが、未だに一審判決さえ出ていないのが実情だ。
 1月29日にはヴァーレ社職員3人と、下請け会社職員2人が30日の期限付逮捕となったが、刑法学者のアントニオ・カストロ氏は、「早く誰かを処罰せよとの国民感情に流されたもので、真に処罰されるべき人物への追及の手が逸(そ)れている」と批判した。
 また、事故の2日後にブラジル入りし、救助、捜索活動を援助していたイスラエル軍が、事故発生から1週間となった1月31日に撤収した。同日午後2時半現在の死者は99人で、救出された生存者は192人、所在や無事確認は395人、行方不明者は257人だ。