《ブラジル ダム決壊事故続報》死者110人と行方不明238人=初七日ミサ、生存は絶望視=問われる新政権の環境政策

州政府が「触ってはいけない」と呼びかける泥に、全身まみれて救助活動を行う消防隊(Bombeiros/MG)

州政府が「触ってはいけない」と呼びかける泥に、全身まみれて救助活動を行う消防隊(Bombeiros/MG)

 【既報関連】1月31日、ミナス州ブルマジーニョの鉱滓ダム決壊事故から1週間が経過した。同日夜の段階で確認された死者の数は100人を超え、行方不明者238人の生存も絶望視されていると、1日付現地各紙が報じた。

 1月31日夜の時点で確認された死者の数は110人で、71人の身元が判明している。無事や所在が確認されたのは394人で、238人が依然、行方不明だ。
 同日夜は、ブルマジーニョのサンセバスチアン教会で初七日のミサが行われた。参列希望者は教会に入りきれず、屋外に設置された大型スクリーンでミサの様子を見守った。
 ミサを行ったミナス州ベロ・オリゾンテ教区のワウモール・オリヴェイラ・デ・アゼヴェード大司教は、(企業側の怠慢や不正も絡む大規模人災という意味で)「犯罪的な大惨事」と評した。同大司教は、3年前のマリアーナでの鉱滓ダム決壊事故にも触れ、「以前の教訓が十分に活かされていなかった」と語り、州政府や司法当局に再発防止策をとるよう求めた。
 15年11月にミナス州マリアーナで鉱滓ダムが決壊した直後、連邦議員たちは、ダム監査の強化、環境犯罪の罰則の強化、被害者への補償の増額などの内容を含んだ法案を13件も提案した。だが、国民の関心が薄れるにつれて動きも弱まり、16年は9件、17年は3件、18年はゼロ件になった。承認された法案は皆無だ。
 今年1月にボルソナロ新政権が発足、2月1日からは上下両院の連邦議会のメンバーも刷新される。ボルソナロ大統領は、経済的利益や産業の発展、外国投資を招く事を環境問題より優先する姿勢を見せていたが、これほどの惨事が起きたことで、環境政策を変化させる可能性がある。

サンパウロ市北部にも鉱業用ダム

 「ダムなんて、このあたりにあったの?」サンパウロ市北部ペルース在住者の大半は、現地を取材した報道陣にそう答える。
 しかし、ペルースには確かに、ジュルアス採石所から出る、石や土砂を溜めておく水交じりのダムがあり、数キロ離れた所には、粘土採掘時の泥を堆積するクラリフィカソンダムも存在する。
 国家鉱業庁(ANM)の調査によると、決壊した場合に想定される被害レベルは両方とも「高」(=人命が損なわれる危険性があり、滞留物流出の際には、社会、経済、環境に強い影響が出る可能性がある)で、事故が起こる可能性は、ジュルアスが「低」で、クラリフィカソンが「中」だ。
 クラリフィカソン管理会社のテリトリアル・サンパウロ社、ジュルアス管理会社のエンブーSAは共に「ダムに危険はない」としている。また、災害救助を担当する防災局(Defesa Civil)は、2社からは昨年、緊急事態行動計画書を受け取っていると書面で発表。住民にも近いうちに公開される予定だという。