松林氏『ある日本移民の歴史』刊行=亡父の渡伯百年記念で日記翻訳

案内に訪れた忍さん(右)とその妻・文江さん

案内に訪れた忍さん(右)とその妻・文江さん

 「曽祖父が何処から来たのか、そのルーツを知りたい」――こうした孫の強い要望を受けて、松林忍さん(85、二世)は『ある日本移民の歴史』(全260項、ポ語)を上梓した。
 これは父・米治さんが、1930年~60年までに書いた10冊の日記を翻訳したもの。15年から翻訳作業をはじめ、米治さんの渡伯百周年祭を祝した昨年7月に合わせて、刊行された。
 忍さんは「父は長男で、東京専門学校(早稲田大学の前身)を卒業したお坊ちゃん。暢気な人だった」と亡父を偲び、「日記のなかにもそれが分かる詩が出てきた。三度の飯よりは、本や新聞を読みたいという人だったから」と目を細めた。
 1930年4月25日の手記には《年ごとに子は殖えども苦しさは日々に増すなり責わ 数多有る子達育しみて無精なる吾に妻の苦や多からめ 無精なる吾と知りつつその無精改め得ざる弱き吾かな》とその心情が綴られている。
 忍さんは「父がこんな調子なので母は苦労しましたよ」とくすりと笑い、「急ぎで刊行したので抜けや洩れもあった。更正して第二版を刊行するつもり」と見通した。なお、本書は、文協図書館でも閲覧できる。