リベルダーデにチャイナタウン?!=中国風の複合商業施設計画浮上=百周年時ACAL案焼き直しか

本紙が入手したチャイナタウン計画のショッピングのイメージ図

本紙が入手したチャイナタウン計画のショッピングのイメージ図

 かつては「日本人街」と呼ばれたリベルダーデも、90年代以降に中国人移民が急増し、中華レストランや商店が立ち並ぶようになり大きく変わった。そんな流れにさらに拍車をかける「中華街化計画」が、水面下で検討されている。もしも実現するのであれば、建設には莫大な費用がかかると見られ、中国政府が背後にいる可能性もあるとの噂も。そうなれば、リベルダーデの景観はガラリと変わりそうだ。

2千平米800席を有する劇場のイメージ図

2千平米800席を有する劇場のイメージ図

 本紙が入手した資料によれば、リベルダーデ通りからコンセリェイロ・フルタード街の上塚周平橋までの東西自動車道(ラジアル・レスチ・オエスチ)に蓋をして、約1万5千平米の“新しい土地”を作り、その上に「チャイナタウン」と名付けられた中国風複合商業施設(ショッピング、劇場、ホテル)を建設する計画だ。
 例えばショッピングは44店舗と約6千平米の食・サービスのスペース、135台の駐車場を完備する大規模なものだ。各施設は大阪橋、三重県橋、上塚周平橋から入れる予定なので、実現されれば柵が撤去されて景観は一変する。
 かつて移民百周年の折には、池崎博文ACAL会長が主導して、同じ場所に予算一億レアルの巨大複合施設建設を計画したが、資金が集まらずに頓挫した経緯がある。その計画を中国風に焼き直したものといえそうだ。
 現在、世界19カ国35カ所に中華街があると見られており、ラオスやスーダンでは中国政府が直接土地を入手し、中華街を建設した。今回の計画も莫大な費用が見込まれることから中国政府の関与を疑う声もある。
 リベルダーデの不動産事情に詳しい大空不動産の小林優子社長は「今ここで不動産を購入するのは中国人ばかり」という。特にガルボン・ブエノ街、トマス・ゴンザガ街で売りに出ている不動産の大半を買っていると噂されるのが、〝3月25日通りの帝王〟ともいわれる中国系帰化人ラオ・キン・シャン氏だ。セントロ小売業界で圧倒的影響力を誇る。04年には、議会調査委員会議長だった当時のルイス・アントニオ・デ・メデイロス連邦下議への賄賂未遂で服役したことも。

幻となったボウレヴァール・リベルダーデ構想

幻となったボウレヴァール・リベルダーデ構想

 フォーリャ紙15年3月12日付けによれば、一族が経営する企業グループが所有する不動産は3月25日通り、ブラス、パリ、モッカ、リベルダーデ、ジャルジン、モルンビ、パウリスタの8地区で100軒以上。14年時点での不動産資産総額は約8千万レアル(約23億円)とあり、現在ではさらに増加していると見られる。
 小林社長は「中国人がリベルダーデに投資し、新しい店を作って活気が生まれたという側面もある」としながらも、「地主は中国人で、従業員や客は日系人というのが今の構図。日本移民は正直さで高く評価されるけど、不動産が何も残らないのは寂しいものね」と呟いた。

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 リベルダーデでは、13年に日本人の常宿だったニッケイパラセホテルが売りに出され、ラオ氏が買うことがほぼ決定していたところを、池崎会長が間一髪で買収する一幕もあった。だが、その後も凄まじい勢いで同氏による土地買収が進んでおり、日系人所有の商店は今では僅かになっている。昨年の日本移民110周年を記念し、リベルダーデのメトロ駅と広場に「日本」名が加えられたことを受け、リベルダーデ商工会議所(ACAL)では士気が高まり、「日本人街の名の下にいかなる民族とも手を携えてサンパウロ市一番の街を築いていきたい」との意気込みで溢れている。
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 だが、このチャイナタウン計画が現実のものとなれば、中華街化が一気に進む可能性がある。百周年のときに日系社会で構想した「ボウレヴァール・リベルダーデ計画」の予算が一億レアル(約30億円)だとすれば、日本政府が15年から19年3月までにサンパウロ市ジャパン・ハウスに費やした約37億円で賄える。JHでは、今年度も約10数億円が計上される見込みだ。これ以上、借りた場所に湯水のように日本の血税をつぎ込むより、リベルダーデに投資して永遠に残る「日本人街」にしてほしいところだ。