JRパス=「狙い撃ちするな!」と怒りの声=在外邦人だけ来年末で終了=大阪万博も控えているのに

JRパス(提供 fletcherjcm, 2010(flickr))

JRパス(提供 fletcherjcm, 2010(flickr))

 「ジャパン・レール・パス(以下、JRパス)」の海外在住日本国籍者への販売・利用期間は当初、2017年3月末に終了されるはずだったが、世界の在外邦人や当地コロニアからの切実な願いが届き、来年12月まで延長になっていた。しかし来年末に再び利用期限が切れる問題を受け、コロニアから批判の声が上がっている。コロニアからは「年寄りの楽しみを奪うのか」「大阪万博も控えているのに」と悲痛な叫び声が出始めた。

 JRパスはJRグループの6社が共同で提供しており、1枚で日本中を周遊できる入場券。現在の利用資格はJRグループによれば「日本国の旅券及び『在留期間が10年以上であることを確認できる書類で、在外公館で取得したもの等』を有する方」とされているが、21年からは「日本に短期滞在する外国人の方」に限定されている。
 サンパウロ市在住者に本件に関して取材すると、利用者の多くが「もうあと何度行けるのか分からないのに…」とJR側の無情な対応に嘆いた。 

佐藤さん

佐藤さん

 南米ブラジル、ツニブラ旅行会社などで働いていた時代、佐藤次郎さんは、とても便利だからと訪日者に勧めていた。「出身県が離れている夫婦が帰郷する際には、レールパスで交通費が軽減したと喜ばれた。一生に一度の旅行だという人もいるので、1回で色んな場所に行きたいんですよ」と説明する。

村上さん夫妻

村上さん夫妻

 訪日する度に利用する村上佳和さん(77、広島県)と誠聖(ことじ)さん夫妻は「外国人は良くて、外国に永住している日本人が利用できないのはおかしい」と怒りを露にする。出身地の広島県はもちろん、昨年はNHKで見た「西郷どん」舞台の鹿児島県を観光した。「健康なうちに色々な所に行ってみたいと思うんですよ」と訴える。

吉田さん

吉田さん

 「年寄りの楽しみを奪っている」と批判するのは、本紙元編集長の吉田尚則さん(78、秋田県)。1980年代からJRパスを使う“お得意様”だ。パスのお陰で色々な場所を旅行した。「日本は観光業を振興しているのに、在外永住者が利用できないのは何故か」と疑問を投げかける。今や一世の人口は減少の一途を辿っているのに「狙い撃ちする必要はない」と一蹴する。

平野さん

平野さん

 若い在外永住者も、たまの帰郷を大いに楽しみたいと考えている。平野司さん(40、埼玉県)は、里帰りと地方の親戚・友人宅訪問、観光にJRパスを愛用。帰郷する時に色々な場所も旅行し、食事や宿泊費で日本の経済活性化にも貢献しているのではと分析する。国籍で制限することに疑問を呈し、JRパス廃止によって訪日しない人も出てくると指摘し、「多くの観光客を呼ぶというJRパスの目的を考えると辻褄が合わない」と困惑した。

 

 

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 JRバス問題に関して続報を出したいので、ぜひ読者の意見を寄せて欲しい。本紙ぷらっさ欄宛に郵便で送ってもらってもいいし、Eメール(redacao@nikkeyshimbun.jp)なら「JRバス問題」と件名に表記を、電話(11・3340・6060、有馬まで)でもOK。
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平野さんはSNSでも「JRパスが利用できなくなるのは残念」と投稿していた。しかし、平野さんは「一番気の毒なのは日系社会の高齢者」と話す。ブラジルのように移民政策で移住した一世は、高齢者が大半。中には訪日経験がほとんどない人もおり、状況は外国人と変わらない。むしろ外国人と異なり訪日を繰り返す人も多ければ、友人に勧めて一緒に訪日する人も。JRパスを利用できないことで損をするのは、むしろ日本側では?