《ブラジル》選挙の二重帳簿絡みは選挙裁に LJ作戦班「最高裁がクーデター」 裁判の能力に不安の声も

14日の最高裁(Nelson Jr/SCO/STF)

14日の最高裁(Nelson Jr/SCO/STF)

 13~14日に、最高裁が「選挙時の二重帳簿(カイシャ2)に絡んでいる汚職事件の裁判を一般の連邦裁判所に移すべき」かの審理を行い、判事投票5対6で否決した。15日付現地紙が報じている。

 これにより、連邦警察や連邦検察庁が摘発し、連邦地裁などが扱ってきたラヴァ・ジャット(LJ)作戦の裁判も、カイシャ2さえ絡んでいれば選挙裁判所で扱うことになる。これは、LJ作戦班の敗北を意味する。

 パラナ州連邦検察のLJ作戦班や連邦検察庁は、「選挙裁判所では汚職全体を裁く機能が弱い」とし、カイシャ2絡みでも、連邦裁判所で扱うことを求めていた。

 それは、LJ作戦で摘発している大物政治家などが絡んだ大型の汚職計画に、選挙でのカイシャ2にあたる収賄が含まれている場合があるためだ。LJ作戦班は、同作戦で摘発してきたように規模が大きく、複雑な犯罪を選挙裁判所が裁けるのかと疑問視していた。

 また、ラケル・ドッジ検察庁長官は、カイシャ2に関し、「国の資産を守るための裁判を行うためのものであるから、選挙裁判所以外の裁判所で扱うのは違憲ではない」として、憲法改正なしでの移管を求めていた。

 エジソン・ファキン、ルイス・ロベルト・バローゾ、ローザ・ウェベル、ルイス・フクス、カルメン・ルシアの5判事はこれらの意見に理解を示し、「最高裁は既にカイシャ2の問題は一般犯罪との見解を出していたはず」(フクス判事)などとして、連邦地裁が扱うことに賛成した。

 だが、マルコ・アウレーリオ・メロ、アレッシャンドレ・デ・モラエス、リカルド・レヴァンドウスキー、ジウマール・メンデス、セウソ・デ・メロの各判事とディアス・トフォリ長官の6人が反対した。その理由は、「カイシャ2に絡む犯罪は従来も選挙裁判所が裁いてきた」(メンデス判事ら)「選挙裁判所に裁く機能がないとする理由がわからない」(メロ判事)などというものだった。

 この結果、最高裁でのLJ作戦絡みの裁判も、通常は最高裁の第2小法廷で扱うが、カイシャ2が絡めば選挙高裁での扱いとなる。ルーラ元大統領やテメル前大統領、セルジオ・カブラル・リオ州元知事らの大物政治家はこれまでも、カイシャ2絡みだと理由をつけ、選挙裁に案件を送るよう求めたりしていた。同様の例が増える可能性は大きい。

 この結果を受け、LJ作戦班のデウタン・ダラグノル検察官は、「LJ作戦が切り開いてきた汚職撲滅への道を閉ざすものだ」と抗議した。

 LJ作戦班と最高裁は裁判前から険悪な雰囲気があった。それは9日にLJ作戦班のジオゴ・カストール検察官が、サイト「アンタゴニスタ」の取材に対し、「今回の裁判は最高裁によるクーデター」と語ったためで、激怒したトフォリ長官が名誉毀損で訴える構えまで見せていた。