《ブラジル》社会保障改革問題=骨抜き目指す勢力が暗躍=本格攻撃は特別委から?=承認狙う陣営も警戒強める

CCJ報告官のマルセロ・フレイタス下議(NajaraAraujo / Camara dos deputados)

 【既報関連】憲政委員会(CCJ)の報告官も決まり、社会保障制度改革案の審議がようやく動き始めた。だが、すでに二つの大きな勢力が、政府案を骨抜きにしようと動いていると、2日付現地各紙が報じた。

 

 一つ目の勢力は超党派の下院議員たちを束ねるセントロンだ。

 政府が出した社会保障制度改革案では、年金受給に必要な最低年齢と最低負担年数に関する規定を変更する。現在はこれらの規定は憲法に記載されており、憲法改正が必要だ。だが、政府案は、今後の規定変更は一般法案として扱えるようにする条項を含んでいる。セントロンは年金や恩給に関する規定は現状通り、憲法に記載(規定変更には憲法改正が必要)するよう主張している。

 セントロンはまた、高齢者や身障者に対する特別恩給(BPC)と、農村労働者年金の受給条件の厳格化にも反対している。セントロン内部でも改革内容やCCJでの方針が一枚岩でまとまっているわけではないが、法案の合憲性、違憲性だけを問うCCJでの審議後、特別委員会でさらに政府案を叩くことで、方針は一致している。

 政府案の骨抜きを目指すもう一つの勢力は公務員たちだ。彼らはCCJの段階で、「公務員の給与天引き率が一般国民のINSS納入率より高いこと」と「03年12月31日より前に働き始めた公務員の権利削減」の二つを撤回させるべく、すでに強力なロビー活動を行っている。

 公務員年金では年金負担率が最大22%になる(INSSは最大11・68%に変更)が、この率を課される公務員は140万人中0・08%の1142人のみだ。

 また、政府案は「03年12月31日より前に働き始めた公務員は、女性は62歳、男性は65歳にならない限り、年金を満額受給できない」としているが、「旧制度ならもっと早く受け取れた人々への救済措置、制度移行措置がない」と労裁判事協会会長のギリェルメ・フェリシアーノ判事は批判している。

 こうした動きの中、CCJでの政府案報告官マルセロ・フレイタス下議(社会自由党・PSL)は、経済省スタッフなどとCCJ通過に向けて作戦を練っている。

 また、フレイタス下議は1日夜、CCJ委員長のフェリペ・フランシスキーニ下議(PSL)や社会保障労務特別局長のロジェリオ・マリーニョ氏、PSL下院リーダーのデレガド・ヴァウジール下議らとも会談した。フレイタス下議は議会内の動きについて聞かれ、「(社会保障制度改革を骨抜きにしてやるぞと言い)注意を引いているだけだ」と語った。

 イスラエル外遊中のボルソナロ大統領(PSL)は1日、帰国後すぐに各政党の代表者たちと会うとの意向を示して、「社会保障制度改革は私のためでも政府のためでもなく、ブラジルの将来のためだ。議会審議で改革案が骨抜きにされない事を望む」と語った。