《ブラジル》新教育相にヴェイントラウビ氏 ヴェレス氏は3カ月で更迭 勢力争いの中間取る人事だが 本人はマルクス文化打倒を望む

ヴェイントラウビ氏(Rafael Carvalho/Casa Civil)

 8日、リカルド・ヴェレス・ロドリゲス教育相が更迭され、後任にアブラアン・ヴェイントラウビ氏が指名された(就任は9日)。同氏はオニキス・ロレンゾーニ官房長官の元側近で、財界での経験こそあるが、教育界での経験はなく、教育界から批判の声が上がっている。9日付伯現地紙が報じている。

 

 ヴェレス氏更迭は8日にボルソナロ大統領がネット上で伝えた。教育省内では、ボルソナロ氏のグル(師匠)と言われる思想家のオラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏とヴェレス氏が対立し、省内人事が朝礼暮改の状態となるなどして、同省の機能が停止状態に追い込まれていた。このため、先週からは、ヴェレス氏更迭は「時間の問題」と見られていた。

 後任にはヴェイントラウビ氏が任命されたが、これも物議を醸す指名と見られている。

 ボルソナロ大統領としては、教育省内のオラーヴォ派の人脈と、現在はオラーヴォ氏と対立関係にある軍関係者が推す人脈の対立を避ける必要があった。そのため、オニキス官房長官の元側近で両者の中間に位置するヴェイントラウビ氏を指名することで、省内の勢力争いのバランスをとることを狙ったのではないかと見られている。

 だが、ヴェイントラウビ氏は、サンパウロ連邦大学(UNIFESP)で会計学の講座で教鞭を取っていたものの、元はボトランチン銀行に18年勤めていた銀行家だ。その後も金融関係の仕事に就いており、教育政策に関与した経験はない。

 同氏と兄のアルトゥール氏は共に同大教師だったが、ボルソナロ氏に心酔し、昨年の大統領選前から、ボルソナロ氏と親しかったオニキス氏に接近。政権移行期には、共に社会保障制度改革案立案スタッフに加わった。アブラアン氏はその後、オニキス長官の側近となり、アルトゥール氏は経済省に入った。

 ただ、こうした経歴に対し、「教育相には、学校運営などの実務経験があり、教育の質改善のための明確な政策を打ち出せる人物が相応しいが、ヴェイントラウビ氏にはその二つが欠けている」と、教育団体「全ての人のための教育運動」のプリシラ・クルス会長は疑問を呈している。

 オラーヴォ氏はヴェイントラウビ氏の就任を喜んでいるという。ヴェイントラウビ氏はオラーヴォ氏の著書のファンとしても知られている。

 ヴェイントラウビ氏は「オラーヴォ氏の見解に全て同意しているわけではない」と言うが、「教育界のマルクス主義文化をなんとかしたい」とオラーヴォ氏に顕著な傾向の意見を語っている。同氏はボルソナロ氏への支持表明後に、UNIFESPの学生たちと激しい対立も起こしている。

 ペニンスラ研究所経営審議会のアナ・マリア・ジニス議長も、「教育で一番大切な問題は子供たちが学校で何を学ぶか。新教育相はイデオロギーを押し付けることで真に学ぶべき事柄を見失わせてはならないということを認識しているか」と疑問を呈している。