デカセギ子弟=自閉症児が日本人の2倍?!=シンポで教育問題が浮き彫りに=「今こそ日系社会が支援すべき」

シンポジュームの様子(Foto/Aldo Shiguti)

 「自閉症と診断されている日本人児童は平均2~3%。一方で、発達に何かしらの障碍があると見込まれる外国人児童はその2倍に上る」――14日、ジャパン・ハウスで催されたシンポジューム「在日ブラジル人労働者子女の教育課題―日伯における文化的影響と学校適応―」で、愛知教育大学の二井紀美子准教授が調査結果を公表した。発達障碍と誤診されたブラジル人生徒が特別学級に追いやられるなど課題は依然として根深く、デカセギ開始以来、子女の教育課題が一向に解決されないなかで、在伯日系社会からの支援の必要性が声高に叫ばれた。

 

 国際協力機構、JICA研修員OB会、在聖総領事館の共催。デカセギ子弟の教育課題を専門とする日伯の有識者が招聘され、講演が行われた。

 開会式で挨拶した野口泰在聖総領事は「非常に意義深い」とシンポジューム開催を称え、今月1日から開始された外国人労働者受け入れ制度を見据えて、「90年以来のブラジル人労働者の経験は、この局面において有益なものになる」と期待した。

 講演では、二井准教授が、外国人児童の自閉症をテーマに発表。同准教授によれば、義務教育以前の外国人児童の通園率は市行政でも殆んど把握されていないといい、愛知県、静岡県にある840の幼稚園、保育所、認定こども園を対象に18年に実施したアンケート調査の結果を公表した。

 その結果、自閉症と診断された3~5歳までの日本人及び外国人児童の割合は平均2~3%。一方で診断されていないものの、発達に何かしらの障碍があると疑われる外国人児童の割合はその2倍以上に上ったという。

 続いて、帰伯子弟の社会適応を支援する「カエル・プロジェクト」の中川郷子氏は、昨年10月から非営利法人「在日ブラジル人を支援する会」が、東京、群馬、静岡、愛知、福井、鳥取で自閉症児に関する調査をしていると報告。その他、当地でもサンパウロ市にある自閉症児療養施設を集めた討議体を発足させている等の最近の活動を紹介した。

 心理学者のオカモト・ヨウコ・マリ氏は、一時的な労働者と見なされていたデカセギが、00年以降、定住者として性質が変化したと説明。「移住過程において家族は弱体化し、その無計画さが子女の将来の職業や人格に影響を及ぼしている」と警鐘を鳴らした。

 いずれの専門家の知見にも共通するのは、コミュニケーションの難しさが日本の学校環境への適応の課題となり、それが不就学にも繋がり得るということだった。

 最後に、JICA研修員OB会のナカオカ・フラビオ会長は「我々が議論している子女の教育問題は、すでにかなり古い話」と話し、「今こそ在伯日系社会の力を結集させ、在日ブラジル人子女のために尽くすべき時だ。今日のシンポが、日本で生活するブラジル人の生活に何らかの違いをもたらす重要な一歩となると確信している」と締め括った。