鹿児島大学とアマゾニア農業大学との学術交流締結=在モジ・ダス・クルーゼス 野澤 弘司

東洋高圧社からの設備贈呈書を手にして(前列左より相澤領事、ジャナエ・ゴンサルベス副学長、野口社長、森川社員)

東洋高圧社からの設備贈呈書を手にして(前列左より相澤領事、ジャナエ・ゴンサルベス副学長、野口社長、森川社員)

 初めに、国立鹿児島大学は、世界の24カ国に散在する68の大学と研究機関との間に、学術及び人事交流を既に締結して居り、国際交流活動を教育目標の一環としています。そしてこの度、新たにアマゾン河口のベレンに所在するアマゾニア連邦農業大学(UFRA、UNIVERSIDADE FEDERAL RURAL DA AMAZONIA)との新たな学術交流が、本年2月に締結されました。
 鹿児島大学は1901(明治34)年創立の旧制第七高等学校造士館を母体に発足し、今や農学部、医学部、歯学部、水産学部、教育学部、工学部、理学部、法文学部、獣医学部の9学部には、学部生9千名、大学院生1600名、教職員2500名を擁する全国有数の国立総合大学であります。
 そして教育目標の一節には御国柄、維新の史実を反映してか、「進取の気風溢れる国際社会の発展に貢献できる、グローバルな視野と実践的な能力の人材を育む」と謳われています。
 これにより遅ればせながら、世界に類を見ない天然資源の宝庫、アマゾン河流域に自生、かつ棲息する多種多様な動植物や魚類資源の生態を究め、持続可能な環境や資源の擁護を前提に、天然素材により高い価値を付加する有効利用法や、地理的に不利なアマゾン河流域のインフラ条件を補填、克服する品質持続法を開発したり、収穫物単体の有効利用部位の原料歩留の向上などに挑み、アマゾン河流域社会に多大な経済効果をもたらす事を目的として、ブラジルでは数少ない農業系と水産系学部を併設する、アマゾニア連邦農業大学との学術交流が締結されるに至った次第です。
 そして時を同じくして誠に天啓のご縁により、既述のごときUFRAと鹿児島大学との学術提携の趣意に対し、鋭敏な感性の実業家であり、篤志家でもあります(株)東洋高圧の野口会長の賛同を得る事が出来ました。
 そして既に列挙した数々の達成目標に対し、優れた即戦力となる同社が誇る世界の最先端技術を駆使した超高圧多目的加工設備の、「まるごとエキス」を、野口会長よりご寄贈頂く恩恵に浴する事態に至った次第であります。
 そして当設備は(株)東洋高圧社とUFRA、鹿児島大学が三位一体となり運営し、得られる共同研究の成果は全て三者が共有する、基本的条件に合意する事ができました。
 去る3月25日には当設備の授受イヴェントがUFRAの学長審議室にて催され、贈呈者の(株)東洋高圧社長と受益者代表としてUFRA副学長、来賓として在ベレン日本國領事、現地の公的研究機関、食品加工企業、汎アマゾニア日本人会、商工会議所等の関係者が多々参会され、東洋高圧社の英断に感謝と今後の研究活動の決意を新たに致した次第です。
 折しも今年は日本人移民のアマゾン入植90周年記念に当たり、生田勇治祭典委員長は既にパラー州知事に当高性能の超高圧多目的設備が、タイムリーにも日本の企業からベレンの後背地で生産される農水畜産物の集散地となるベレンのUFRAに、当設備が贈与された事は誠に意義深いものであり、近い将来、この設備の基礎研究によりもたらされる成果に伴う多大な経済効果や、医療関係への有効利用が期待される事を進言致しました。
 私ども日本人移民の先達はアマゾン移民のみならず、その開発の過程において、灼熱の太陽と各種の病魔との文字通りの死闘により得た収穫物の、換金手段や付加価値、有効部位の歩留の向上などへの意欲に疎く、典型的な「作り上手の売り下手」に甘んじていたきらいもありました。
 しかし近い将来、当超高圧設備の「まるごとエキス」が旧態依然とした既成観念から脱却した、新たな営農への発想の転換の決起になる事を期待致します。
 当超高圧設備は素晴らしい性能を具備していると、ただただ繰り返し述べるだけでは読者諸賢には納得頂けないと思いますので、特性や仕様の具体例を列挙させていただきます。( 順不同 )
【実例1】超高圧と聞くだけで「爆発」を連想して身の危険を感じますが、この設備は100Map(1トン/cm2)の圧力だが、その媒体はガスでは無く「水」が高圧の環境を作るので操作は安全で簡単で、公的機関より取得する高圧機器取り扱いの免許は不要です。
【実例2】殺菌法には加熱、ガス燻蒸、低温、放射線、紫外線照射らがありますが、この設備は熱を必要とせず常温で、ワンタッチで超高圧環境をもたらして、高圧の下で細菌の作用を抑制し殺菌や滅菌が可能です。
【実例3】圧力媒体の水温を40?50℃にして、酵素分解に不要物を除去し、酵素反応を促進させて食材を液化(エキス化)を可能にします。
【実例4】冷凍や解凍のプロセスを経ずして、高圧処理した抽出物製品は常温輸送が可能です。
【実例5】高圧処理により加工した素材の容積は縮小(減容化)され、コンパクト化するので、運搬車両当りの積載量が増大して、輸送コストの削減と製品の安全輸送が可能となります。
【実例6】加圧により24時間で素材を分解し、まるごとエキス化して微生物の繁殖を抑え、更には酵素分解を促して風味や旨味成分を、そのまま維持するばかりか更に増加させます。
【実例7】機械的に圧力を保持し、その間の電力はモニターのみと最低限の消費量に抑えます。
【実例8】高圧処理食品は保存中にアミノ酸が生成され、冷凍保存食品に比べ旨味成分が増えます。
【実例9】生の加工食品の領域(レパートリー)が一挙に拡大します。
【実例10】高圧処理により長期保存が可能となり、品質維持の見地から店頭販売期間の延長、即ち賞味期限の延長を可能にし、売れ残りや返品や廃棄処分の減少に伴う損失を低減します。
【実例11】高圧により酵素を素材に浸透させ、且つ分解を促進させてエキス化を伴うので、新基軸のエキス食品の付加価値商品化が可能となります。
【実例12】高圧無菌化したマグロの刺身や高級魚肉は、常温での高圧殺菌後は凍結する事無く、4℃にて冷蔵するだけで50日間は刺身としての品質維持を可能にします。また保存期間中に旨味成分が増え、凍結保存刺身より味覚が向上し、商品価値を上げ増収増益をもたらします。
【実例13】本体は小型冷蔵庫より小さく、設置面積も狭く、家庭用上下水道で利便性に富みます。
【実例14】高圧により分子同士が激突反応し、素材への浸漬効果や熟成期間を短縮します。
【実例15】カット野菜の殺菌に有効です。
【実例16】既存の製品に混ぜる事ができ、製品に付加価値と差別化の付加が可能です。
【実例17】様々な原料素材の加工技術の習得により、付加価値商品の創出と雇用創出が可能です。
 以上、超高圧多目的加工設備「まるごとエキス」の特性と仕様の一部をご参考迄に列挙致しました。当方、Hiroshi Nozawa への連絡先;011ー99966ー2588、 ecohnozawa@gmail.com Rua Leopoldino de Faria, 139、Mogi das Cruzes, SP,  CEP 08730?400(元JAIDO及びJICA専門家、1961年鹿児島大学水産学部卒、同年ブラジルに移住)