《ブラジル》環境省=気候変動対策費を96%凍結=ドイツとの共同事業も停止か

原生林伐採面積はブラジルがトップだったと報じた4月25日付G1サイトの記事の一部

原生林伐採面積はブラジルがトップだったと報じた4月25日付G1サイトの記事の一部

 リオ州などで繰り返される水害の原因にも地球温暖化が挙げられる中、気候変動抑制のための対策費の96%が支出削減の対象となっている事がわかったと7日付エスタード紙が報じた。
 環境省関連予算中、気候変動対策費は1180万レアルだが、連邦政府による支出削減提唱後に削減された予算額は1130万レアルで、実働費は50万レアルしか残されていないという。
 気候変動対策にあたる主要機関は、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)と生物多様性保全のためのシコ・メンデス研究所(ICMBio)の二つだ。Ibamaは、3億6830万レアルの予算が24%削られて2億7940万レアルになった。また、ICMBioや環境省そのもののプログラムでも支出削減が行われている。
 同省のプログラムで具体的な影響が出ているものの一つは、ドイツとの共同事業プロ・アダプタ(ProAdapta)だ。ドイツ政府はこの事業に500万ユーロを投入済みだが、環境省が投入すべき200万ユーロは実質的に止まっており、事業実施が危ぶまれている。この事業には、バイア州サルバドールでの、大雨や海水面上昇などで浸食された海岸や河岸の回復などが含まれている。
 また、オズワルド・クルス財団との共同事業である、社会経済階層や基幹構造に基づき、気候変動に伴って起こる災害の程度や対処法を診断するための全国プログラムも停止状態となっている。同財団によると、事業計画は契約書への署名を残すだけで、既に6州での作業も終えたが、今後の見通しは不透明だ。
 再生資源ごみのリサイクルを勧める「固形ごみ処理政策」も、770万レアルの予算が83%減の130万レアルに。
 Ibamaは、基幹構造に関する事業に環境許可を出すための経費が43%減り、森林火災対策費も減額。ICMBioも森林火災の予防・対策費が20%削られた。
 また、温室効果ガス排出量を20年までに36~39%削減という国際的な約束を果たすために09年に創設された気候変動全国警察の活動も、窮地に立たされている。
 1月にはエルネスト・アラウージョ外相が「気候変動はマルクス主義によるトラウマ」と発言した上、リカルド・サレス環境相も「地球温暖化に関する議論は第2、第3の問題」と言い始めるなど、気候変動に対する現政権の意識は低い。現場の必要や国際的な意識とのギャップが表れたのが今回の支出削減で、気づいた時は回復不能という事態に陥る事を懸念する声も出ている。