日常生活を通して伝わる文化

 スーパーで買い物中、狭い通路の先に日系人の婦人が立ち止まるのが見えた。通路に入って来られるようカートを止めると、「お先にどうぞ」と手招いてくれたので、お辞儀しながら通路を抜けたら、肩を叩かれ、「繊細ね~。日本人だわ」と言われた▼日本人なら、一旦止まって待つ事やお辞儀は当たり前。だが、そんな些細な行為が目に留まったのだと気づいた時、外国人に日本の文化や習慣を紹介する映像の中に、横断歩道を渡り終えた小学生達が運転手にお辞儀する様子や、放課後の校内清掃の様子を映したビデオがあった事を思い出した▼知人の孫が空手を習い始め、挨拶の言葉に日本語が増えた事や、「礼!」の形のお辞儀が増えた事も、日常生活の中の日本文化を感じさせる。知人の子供達は以前、NHKが日系人のバンド(楽団)を探していると言われ、ブラジルの曲を演奏しに行った。その際、日本の曲も知っていると聞いた担当者に美空ひばりの曲なども弾くよう頼まれた上、「どこで日本の曲を覚えたのか」と訊かれたという。知人の長女は、「母のおなかの中にいた時から聞いていた」と答えたそうだ。これは、親や周囲の人が言葉や態度、行動で伝える文化や習慣が多々ある事を示している。知人の子供達(三世)は童謡や唱歌も一般の日系人以上に良く知っているが、知人は本まで探して歌い聞かせていたという▼残念ながら、我が家では孫と一緒にいる時間が減り、童謡を聴かせる機会が少なくなったが、自宅では親が好きな日本のアニメ主題歌などを一緒に歌っているとか。大上段に構えず、日常生活の中で触れ、見聞きする事で伝わる文化の大切さに思いを馳せた事だった。(み)