立つ鳥あとを濁さず=移民の「終活」座談会=(6)

子供がいても遠方住まい

日伯友好病院の正面玄関

日伯友好病院の正面玄関

【深沢】長谷川さんは巡回診療で地方の方と沢山お会いになる機会があると思いますが、地方の方は終活についてはどういう感じなんですか?
【長谷川】地方在住者338人にアンケートをとったんですけど、独居と高齢夫婦世帯の割合が高くて、2つを合計すると全体の半数にもなりました。要は高齢者だけで生活しているという人が多いんですね。
 そして、もし自分の体が悪くなって動けなくなったら、誰に面倒を見てもらうかって質問には、4分の1くらいの方が「そんなの考えてないよ」って答えられるんですね。
 日本では「家族」や「施設」と答える人が多いのでびっくりしちゃいましたね。
 でもそこがブラジルの良いところでもあると思うんですけどね。その日その日の楽しさを大切にするという所。個人的には大好きなんですけどね。
【上野】でもいずれは来ることだからね。もしかしたら考えてるけど言えないのかもしれないね。
【長谷川】そうですね、家族に頼みたいなと思っていても、家族には言えないから考えていないと答える人もいたかもしれませんね。
【深沢】お子さんが地方や日本、外国に住んでいるという方、結構多いですよね。
【長谷川】そうですね、普段近くに居て会話できるところに家族がいれば良いですけど、離れている場合は予め伝えておかないといけないですよね。
【深沢】そうなると「遠くの家族より近くの他人」ってことにもなりますよね。何かあったときに頼れる人が居ればいいですけど居ない人も居る。
 そういう時に例えば、援協の福祉部に連絡したら有る程度のことはしてくれます、とかっていうのがあると非常に助かりますよね。どの程度のことは援協福祉部でやってくれるとか、あらかじめ知っておきたいですよね。
 もちろん、「何でもかんでも援協に」というのは援協も大変だから気をつけないといけないけど。
【中川】仲の良い人が近所に居てね、「あの人ここ2、3日見ないけど大丈夫かな」なんて、気にかけてくれればいいけどね。
【深沢】それが理想ですよね。ラジオ体操に参加されてる方は、毎日顔合わせて「今日は調子が良い」とか「悪い」とか、お話されてるじゃないですか。体を動かしながら悩みごとの相談とかが出来るから、ラジオ体操は精神衛生上も良いなと思うんですよ。
【上野】そういう繋がりがあると便利だから、昔は老人週間を文協、援協、熟連が協力してやってたんですよ。今は皆バラバラにやるようになってしまったけど。
【深沢】今の文協は良くも悪くも、高齢者の一世が集う場所では無くなっていますよね。やっぱり二、三世の人が中心になって、そちら向きの団体になっている。
 そして、援協もコロニアの団体というよりは、グアルーリョスの日伯友好病院の付近の住民のための団体という部分が強くなっている。
 その分、一世や日本語中心の二世が集える場所がなくなり、熟連に責任がかかってきていますよね。(つづく)

編集部調べ
遠くの家族より近くの他人
日系高齢者向けアパート

すいせんビルの完成予想図【提供写真】

すいせんビルの完成予想図【提供写真】

 《仲の良い人が近所に居てね、「あの人ここ2、3日見ないけど大丈夫かな」なんて、気にかけてくれればいいけどね》という発言が、終活連載あった。元気な高齢者が便利な場所ににまとめて住んでいれば、もしかしてお互いに支え合うように楽しく生きていけるのではないか。そんな試みが始まっている。
 小林建設と大空不動産が共同で企画している、日系高齢者向け分譲アパート『すいせんビル』の建設計画だ。住所はリベルダーデ区グロリア街501番。ブラジルもこれから間違いなく高齢化する中、いずれ注目を浴びそうな設計のアパートのようだ。
 老人ホームや特養施設と違い、健康な日系高齢者向けにバリアフリーの分譲アパート。立地するリベルダーデは、日本食材店が多くあり、県人会や文協などの日系団体が日系人にはなにかと便利な場所。交通の便も良く、援協リベルダーデ医療センターも近くにある。一人暮らしの高齢者のみならず、おすすめの物件となるのは間違いない。
 6月末までに全70戸の70%、49戸以上の予約が入れば着工し、工期は着工から2年半の予定だ。現在は検討段階だが、1階の共用スペースには、高齢者には便利な設備がズラリ。食堂や落ち着いて日向ぼっこもできる憩いの広場、コインランドリー、出張医療が受けられる診療室やリハビリ室を設ける計画がある。ただし今後、購入者の声を聞きながら、最終決定するようだ。
 予約は先着順。好きな種類の部屋を選び、階や部屋の場所も確保出来る。問合せ、予約申し込みは大空不動産、小林優子さん(11・3277・8545/3274・6775)まで。