いずれにせよ、出るべきではなかったネイマール

インスタグラムでのネイマール

インスタグラムでのネイマール

 5月末から勃発した「強姦疑惑騒動」から5日までドタバタした結果、ネイマールは「故障」という形でコパ・アメリカの出場を断念することになった▼5日夜にはネイマールを訴えた女性、ナジーラさんが実名と顔を公表してSTB局のニュースにも生出演し、彼女の信憑性を巡って世の評価は二分されている。仮にあの番組で流された映像で、彼女の方が先に暴行を加えていなかったとしたら、サッカー選手生命としても危ういところだった▼だが、仮にそれが「強姦や暴行であったのか」とか、「コンドームなしの性行為強要は強姦にあたるか否か」などに関係なく、ネイマールはコパ・アメリカには出場するべきではなかった、とコラム子は思う。それは彼の、サッカーのスター選手であることの「無自覚」によるものだ▼この事件の存在が無くてさえ、今回のネイマールのコパ・アメリカへのセレソン召集には反対の声もあがっていた。それは彼が4月末にフランスでのPSGの試合で起こした、野次を飛ばしたファンへ手を挙げた問題があったためだ。彼はこの件で、フランスのサッカー協会からの処分待ちの身だった▼ところが、そのフランスの試合の件から2週間、コパ・アメリカまで残り1カ月という微妙な時期だった5月15日に、ネイマールはこともあろうに、インスタグラムで知り合ったナジーラさんに自腹でサンパウロからパリまでの航空券を買って、宿泊先のホテルにこさせた。「世界的セレブらしい豪華な女遊び」と言ってしまえばそれまでだ。だが、サッカーを第一に考えないといけない選手として大事な時期に、そんなことをして羽目を外していたのか、と思うと情けない気にもなってくる▼そして、対処の仕方にも問題があった。おそらくは大金が舞い込む身分となった後、「だまされて全てを失うようなことには注意しろよ」とでも言われたのだろう。ネイマールは今回の疑惑に関して、「反論のための証拠ならここにある」と言わんばかりに、自身の携帯電話のワッツアップを公表することで恥も外聞もなく無実を証明しようとした。これは結果、ナジーラさんのヌード写真まで公表するという軽犯罪のおまけまでついたが、これで彼に同情する人たちもつけた▼だが、このやり方は同時に、ネイマールその人の品格を大いに損なわせる行為でもあった。「サッカーで世界屈指の実力の選手」などといったら、世界中の子どもたちに夢を与えている立場だ。そういう人が、こういう私生活の性的な痴話を堂々と公衆にさらけだすとは。こんな話は、世界のスポーツ史上でも例を見ない下品さではないだろうか。彼の無実を信じる人は少なくないだろうが、サッカー選手としての日常的な姿勢や品性に関しては失われたものはあまりに大きい▼結果的にネイマールが出場できなくなったことで、セレソンがコパ・アメリカで倫理的問題でとばっちりを食らうことはなくなった。もちろん「戦力的には損失は痛い」とする声は少なくないだろう。だが、コラム子としては、もうそろそろセレソンは、彼なしでもやっていけるような体制を作るべきではないかと思う。2014年のW杯のときは準々決勝での彼の負傷退場が準決勝の対ドイツ戦の1―7の惨敗につながったが、あの時と違って、現在のセレソンは若手選手の台頭が盛んになってきており、いつでも世代交代できる状態にもある。彼らにとってもよい機会だ。また、ネイマールにとっても、「一からまたレギュラーを取り戻す」くらいのハングリーさを取り戻すべきなのではないかと思う。(陽)