《ブラジル》教育省=「基礎教育重視」の裏側で=高等教育の現場の窮状続々と=中断中の建設工事543件

建設が中断しているABC連邦大学新校舎(15日付エスタード紙の記事の一部)

 【既報関連】教育省が11日に、2022年までに4900の保育所建設などを含む「基礎教育充実のための国家戦略」を発表したが、その一方で、支出削減を受け、いくつもの大学で留学取り止めなどの影響が出ている。また、建設工事などの大きな事業が543件も中断されている。
 15日付エスタード紙によると、高等教育への支出削減の影響は、管理部門での努力でカバーしきれておらず、学生達も様々な形の影響を肌で感じているという。
 教育省が支出を削減した事で、大学側は、電気代や水道代の節約、清掃や警備、学食などの外注サービスへの支払い停止その他の形で経費を削減し、教育、研究機関としての機能を継続しようとしているが、現実はそれほど簡単ではない。
 サンタカタリーナ連邦大学からアルゼンチンの大学に留学するはずだったヴィセンテ・エイネンさん(21)は、交換留学生募集のテストで1番になり、合格通知を受け取ったが、その2日後に留学生派遣キャンセルの知らせを受けた。同校は6月に、経費節約を理由に全ての国際的な計画中止を発表している。
 パラナ連邦大学に在籍し、留学生試験に合格して、ポルトガルのポルト大学への留学が決まっていたフェルナンダ・ヴァンゼリさん(22)も、ビザの手続きを始めた段階で支援打ち切りを通達され、親族や友人らにカンパを求めたという。
 また、同大の森林工学専攻のヴィニシウス・スカエフェルさん(22)は、研究活動の一環としてサンタカタリーナ州ウルビシを訪れるはずだったが、5月になって、300キロ以上離れた所への旅費は出せないとの通達が出た。同時に学食も閉鎖され、研修生として受け取る400レアルで生活するため、弁当持参を強いられている。
 サンパウロ連邦大学では、ジアデマ市内にある二つのキャンパスを結ぶバスの運行本数がどんどん減り、徒歩で移動中、強盗被害に遭う学生も増えているという。同大では、構内の清掃や研究室のメンテナンスにも問題が生じているという。
 ABC連邦大学でも、公共交通機関とキャンパスをつなぐバスの本数が減り、学生同士で乗り合わせるなどしているが、バスのターミナルに入るには危険な場所を徒歩で抜けなければならない。また、新校舎の建設も中断したままだという。
 15日付G1サイトによると、新校舎の建設といった大きな事業(予算額150万レアル以上のもの)の中断や計画自体が止まった例は、2009年以降のものだけで543件に上り、契約総額は36億レアルを超えるという。
 全国会計局職員協会によると、経費の一部が払われたのに中断、学生は何も恩恵を受けていない事業に費やされた金額は16億レアルに上るという。中断または計画倒れになっている事業は南東部174件、北東部143件などとなっている。