《ブラジル》カメの腸から袋やコップ=プラスチックが海洋を汚染

プラスチックごみと共に海岸に打ち上げられたアオウミガメの死体(24日付G1サイトの記事の一部)

 ブラジルの海岸に打ち上げられて死んだアオウミガメを解剖する映像を、プラスチックごみによる海洋汚染やそのリスクに関する啓蒙活動に使っている人がいる。
 アラゴアス連邦大学教授のロブソン・ギマランエス・ドス・サントス氏だ。問題の映像はサントス氏が博士論文を書いていた2012年に撮影したもので、カメの腸の内容物にはプラスチックごみが混じっていた。
 ストローやコップ、買い物袋などのプラスチック製品は我々の暮らしを便利にするが、扱い方を間違えれば、環境を破壊し、ブラジルの海岸部でよく見られる海洋生物の一つであるアオウミガメなどの死も招く。
 サントス氏によれば、プラスチックごみは海洋汚染の原因の一つであると共に、体内に取り込む事で死を招き、ウミガメ類の存続性を脅かす主要問題の一つだという。
 同氏によれば、若いアオウミガメなら0・5グラムのプラスチックごみを飲み込むだけで死に繋がる。餌と間違えて飲み込まれたプラスチックごみは消化されず、消化器官の中に留まる。消化器の中にごみが溜まれば何も食べられなくなり、やせ衰える上、その他の活動も出来なくなる。身動きもままならなくなったカメは、長時間苦しみながら、じわじわと弱り、死に至るのだ。
 サントス氏がエスピリトサント連邦大学の博士課程で行った調査では、2009~13年の5年間に255匹のアオウミガメを扱った。ブラジルの海岸部に打ち上げられて死んだアオウミガメの7割は、プラスチックごみを飲み込んでいたし、場所によっては、その割合が100%だった所もあるという。
 専門家によると、釣り人が誤ってカメを釣り上げてしまう事も死因となりうるが、釣りを規制するのはまだ簡単だ。だが、プラスチックごみを飲み込んで死ぬ例は根絶が困難だ。世界では、5兆に及ぶプラスチックごみが海上を漂っていると推定されている。
 また、プラスチックごみや釣り以外にも、海洋生物の命を脅かすものがある。それは、ごみや排水の処理という、基礎衛生上の問題だ。
 2015年に米国の海洋教育協会が行い、『サイエンス』誌に掲載された調査によると、同年の場合、ごみや排水が適切な処理がなされなかった事で、海洋に届いたプラスチックごみは800万トンに上ったという。プラスチックのコップが分解されるには最低200年、PETボトルの場合は最低400年かかる事も、問題を複雑にする。
 プラスチックによる環境汚染は人類にも影響を及ぼしており、飲み水や食物に含まれる微細なプラスチック片を人体が取り込んでいる事は様々な研究で確認されている。だが、その実態や影響の度合いはまだ調査中だ。
 サントス氏によれば海岸部の侵食や海洋汚染はカメのがん発病という形でも確認されており、市街地が近く、汚染度が高い海ではがんにかかったカメが増える事がわかっている。アオウミガメは環境破壊の実態を示すリトマス紙の一つとの言葉を忘れてはなるまい。(24日付G1サイトより)