《ブラジル》農薬分類の新基準を発表=高危険度の農薬が低危険度扱いに

テレーザ・クリスチーナ農相(Jose Cruz/Ag. Brasil)

 ブラジルの国家衛生監督庁(ANVISA)は23日、農薬が健康被害を及ぼす危険性の高さに応じて分類していた基準を変更すると発表した。24日付現地各紙が報じた。
 政府が新たな農薬の使用を次々に認めていることへの批判が高まっている最中に、危険度分類基準の変更が発表された。22日には51種類の農薬の使用が認められており、今年に入ってからの新規認可は290種に達した。
 現在の分類は、「極めて毒性が高い」、「毒性が高い」、「やや毒性あり」「毒性は低い」の4段階だが、新たな基準では「健康に深刻な害を及ぼすほどではない」「危険度が極めて低く、分類なし」が加わる。
 現在のブラジルでは、約2300種の認可済み農薬の内、700~800種が「極めて毒性が高い」に分類されているが、新基準ではそれらが、「やや毒性あり」「毒性は低い」「健康に深刻な害を及ぼすほどではない」に変更され、少なくとも500種が「極めて毒性が高い」から外れる。
 これまでの基準では、「皮膚や目に直接触れると痛みやかゆみ、かぶれなどを引き起こすか」も考慮されていたが、新基準では「接触したり、体内に入ると命に関わるか」だけが基準となる。
 公衆衛生分野の研究機関、オズワルド・クルス研究院(Fiocruz)所属の研究員、ルイス・メイレレス氏は、「旧基準の『目にダメージを与えるか』は重要だった。扱い方しだいでは失明もするのだから。ブラジルは欧州連合(EU)と違って、農薬から身を守るための農家への教育も不足しているし、防護のための機材も乏しい。そんな現状ではなおさらだ」と語る。
 Anvisaは、世界基準の農薬分類を使用することで、農薬購入時のコミュニケーションなどが容易になるとしている。新基準は国連基準に則っており、少なくとも53カ国が使用している。農薬製造業者は新基準に適応するため、1年の猶予期間が与えられる。
 現状は全ての農薬にドクロマークが付くが、新基準では、「極めて毒性が高い」「毒性が高い」「やや毒性あり」までの農薬にしか付かない。これらの農薬の容器にはドクロマークと共に“危険”の文字が入る。ドクロマークの付かない農薬には、“取り扱い注意!”の表記が入る。
 「極めて毒性が高い」と「毒性が高い」農薬の容器には赤い帯が入り、「やや毒性あり」には黄色い帯が入る。「危険度は低い」「健康に深刻な害を及ぼすほどではい」「危険度が極めて低く、分類なし」の3種の容器には緑か青の帯が入る。