《ブラジル》2019年版の暴力地図を発表=殺人の半分は2%の市で発生=北部、北東部の酷さ浮き彫り

ファヴェーラで治安維持活動を行う軍警(Tomaz Silva/Ag. Brasil)

 2017年にブラジル国内で発生した殺人事件現場を地図に落とし込み、州や市ごとの治安の状況の違いを表した「2019年度版暴力地図」が5日に発表された。5、6日付現地各紙・サイトが報じた。
 応用経済調査院(Ipea)がブラジル治安フォーラム(FBSP)の協力を得て作成した暴力地図によると、17年に国内で発生した6万5602件の殺人事件のちょうど半数、3万2801件が、国内5570市の僅か2・1%、120市に集中していたことが分かった。
 同調査では、人口10万人あたりの殺人事件発生率で治安の良さを測る。国内で最も殺人発生率が高い上位20市中、18市は北部7州、北東部9州に集中していた。
 殺人発生率が最も高かったのはセアラー州のマラカナウ市で、殺人発生率は人口10万人あたり145・7人。2位のパラー州アウタミラは133・7人だった。
 逆に殺人発生率が最も低かったのはサンパウロ州のジャウー市(2・7人)だ。殺人発生率が低い20市は全て、南部、南東部の市が占めた。
 州都別の殺人発生率を見ると、最も高いのはセアラー州のフォルタレーザ(87・9人)で、2位はアクレ州のリオ・ブランコ(85・3人)だった。上位11位までは全て、北部、北東部の州都が占めていた。最も殺人発生率の低い州都はサンパウロ州サンパウロ市(13・2人)だった。日本の全体平均は0・24人だ。
 殺人発生率が高い市は人間開発指数が低く、殺人発生率の低い市では人間開発指数が高いという傾向が見られた。
 殺人発生率の高い市では、住民の就学率が殺人発生率の低い市の6割しかなかった。また、15~24歳の青少年で、就学せず、就業もしておらず、貧困にさらされている若者の比率は、殺人発生率の高い市と低い市では4倍の差があった。
 地図作成コーディネーターを務めたダニエル・セルケイラ氏は、「殺人事件が限定的な地域に集中している。危険地帯に重点的に対策をとることが肝要」と語る。同氏は、殺人が多発している市でも、事件の半数は10%以下の地区に集中していることを挙げ、「だからこそ、危険な市として一般化するのではなく、危険な地区を対象に対策を練らなくてはいけない」と説明した。
 殺人発生率が比較的高い市の一つのゴイアニア州ルジアニア市の場合、市内4地区に殺人事件の半数が集中している。特に、35%が集中しているジャルジン・インガー区は最優先対策区だ。
 セルケイラ氏は、「殺人を減らすには、兵士を道に立たせるのでも、むやみに人を撃つのでもなく、若者が犯罪に染まらないよう、危険地域に重点を置いた対策を練ることが必要」とした。