父と子の絆を描くメッセージ

 父の日(8月第2日曜日)が近づいている。ブラジルでは、6月の恋人の日と10月の子供の日の間を埋めるため、8月に決めたと聞いた事がある。理由はともあれ、父親への敬意や感謝を覚え、示す日は、大切にして欲しい。そういう意味で、この時期にSNSでよく流れる、息子が父親をレストランに連れて行く、次のような話を思い出す▼高齢で脳血管障害の後遺症も残る父親が、食べ物をこぼしたりしながら食事をする様子を、周囲の人は冷ややかな目で眺めている。息子は何も意に介さず、にこやかに見守る。父親が食べ終わると、息子は手伝って立ち上がらせ、トイレに連れて行く。食べかすで汚れた服や父親の顔を拭いてやり、髪の毛に櫛まで通して出てくると、店内はしんと静まり返っている▼代金を払った息子が、父親に寄り添って出て行こうとするのを男性が呼び止め、「君は何かを店に残していこうとしているのに気がついているかい」と訊く。息子は怪訝そうな顔で「私が? 何も残してなんかいませんよ」と答える。だが、男性は改めて「いや。君は確かに何かを残した」と言い、「息子達には貴重な教訓を、父親達には希望をね」と言葉を重ねる▼2年前には文章だけ、今年は絵入りのメッセージをSNSで受け取ったが、心が熱くなる内容である事は変わらない。親子の間でいさかいがあって、互いに素直になれない人もいるだろう。息子が若く、父親の愛情や苦しみを汲みきれない例もあり得る。だが、地上で許された時間の中で、互いの愛情を温めあい、確認しあう時を大切にして欲しいと心から願わされる季節だ。少し早いが、父親達への感謝や支援の思いを込めて。(み)