《ブラジル》サンパウロ州の女性殺人44%増=政府が女性保護対策集に署名

女性保護対策集に署名するラケル・ドッジ検察庁長官(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 家庭内暴力防止のためのマリア・ダ・ペーニャ法裁可から丸13年の7日、女性への暴力行為が増加傾向にある事を示すデータと共に、連邦政府が女性保護対策に署名したとの報道が流れた。
 夫からの暴力行為に苦しみ、銃撃で命まで落としかけた女性の名を冠した法令は、女性専門の警察署開設などの諸対策のベースとなり、家庭内暴力や女性殺人を減らすのに貢献したが、13年後の今も、女性への肉体的、精神的暴行は続き、命を落とす例も多い。
 判事や弁護士といった専門家も同法適用のあり方や効率性に疑問を呈しているのは、女性に対する暴行事件や女性殺人が増えているからだ。
 7日付G1サイトによれば、上半期のサンパウロ州での女性殺人は82件で、57件だった昨年同期より44%増えた。事件数が最少だった6月でさえ10件で、昨年同月比67%増を記録した。
 同州での暴力犯罪(強盗殺人や殺人、窃盗、強姦)は昨年上半期より減少しており(殺人や強盗殺人は統計開始以来最少を記録)、女性殺人の増加が際立っている。
 また、82件中60件(73%)は家の中で起き、46%は犯人が現行犯逮捕された。犠牲者の大半は事前の被害届もなく、保護対策が採られていなかった。夫が飲酒後に帰宅して妻と口論になり、妻を刺殺後、自殺を図った例などはこれにあたる。サンパウロ州の女性殺人の犠牲者の平均年齢は36歳だった。
 サンパウロ州保安局は既に、24時間対応の女性専門署を1から10に増やしたが、残りの30の署も22年までに24時間対応にする予定だ。また、巡邏中の警官が女性優先で対応できるよう、SOSムリェールというアプリも導入。暴行者告発の手続きも含めた啓蒙活動も行う。
 マリア・ダ・ペーニャ法裁可からの13年間に殺害された女性は1万2千人(全国)で、保護措置を要請した女性は90万人いる。リオ州では7月だけで3万人以上が警察に通報したりして助けを要請。女性への暴力事件防止を目的とする巡邏活動も始まった。
 7日付アジェンシア・ブラジルによると、ブラジリアでは、法相、女性家庭人権相、連邦検察庁長官、最高裁長官が女性保護のための対策集に署名。ダマレス・アウヴェス人権相によると、180番通報による女性への暴行告発は、昨年が9万2千件、今年も既に4万2千件に上るという。