チリ人誘拐犯を強制送還へ=同国内では政治家殺害も

 ブラジル政府は、2002年に逮捕され、現在服役中のチリ人の誘拐犯マウリシオ・ヘルナンデス・ノラムブエナ受刑囚を、チリ政府との間での合意により強制送還することに決めたと、20日付現地紙が報じている。
 ノラムブエナ氏は2001年に実業家のワシントン・オリヴェット氏を誘拐した、南米拠点の国際的犯罪グループに参加し、2002年にブラジルで逮捕された。
 同氏は30年の実刑判決を受け、連邦刑務所での収監が続いていたが、刑期が16年を迎えたことで、今年4月にサンパウロ州アヴァレーの一般刑務所に移された。17日には、強制送還の前準備としてサンパウロ市の連邦警察に身柄を引き渡されていた。
 ブラジル側はチリ側とノラムブエナ氏の強制送還に関する話し合いを行ったが、ブラジルの提案する「死刑や終身刑には処さない」との条件をチリが飲んだことで、送還することに決めた。
 ノラムブエナ氏は1991年、同国の元独裁者ピノチェト氏に近かった上院議員のハイメ・グスマン氏をテロで殺害。同国大型紙「エル・メルクリオ」の御曹司クリスチアン・エドワーズ氏の誘拐にも加わったとされ、同国ではこれらの犯罪で「死刑もしくは終身刑」が予想されていた。
 だが、ブラジルには死刑ならびに終身刑が存在しないことから、この合意が必要となった。
 ノラムブエナ氏の弁護人はこの決定に不服を示し、最高裁に上告を行う予定だ。