リオ・ブックフェア=リオ市長が同性愛書籍に回収命令=市民は反発、最高裁は「不当な検閲」と判断=市長は「伝統的家族の価値観守る」の主張崩さず

「リオ市長の検閲行為」と大きく報じる7日付のブラジル紙1面

 8月30日~9月8日にリオ市で、2年に1度のブックフェアー、第18回ビエンナーレが開催された。5日夜、リオ市のマルセロ・クリヴェラ市長(共和党・PR)が男性同士のキスシーンがある出展作品の回収を示唆、6日には実際に回収を命じたが、同件に関する司法判断は6~8日にかけて二転三転。市長の2度目の回収作戦は、それに反対するYouTuberによる同性愛関連書籍の買占め及び無料配布へと発展した。7~9日付現地各紙・サイトが報じている。
 回収が命じられたのは、米国の人気漫画「アヴェンジャーズ」の「子供の十字架」のポルトガル語版(Vingadores, a cruzada das crianças)だ。6日に市の職員が回収に動いた際は、回収に反対する市民らが全て買い占めた後だった。
 クリヴェラ市長は「私の意図は誤解されている。検閲ではない。同性愛の問題は家族の中でだけ話し合われるべき。容易に青少年の目に触れるのはいかがなものか。家族の価値観を守りたいだけ」と発言した。
 だが、6日夜、リオ地裁は「ブックフェアでのいかなる作品回収も禁じる」との仮判決を出した。
 しかし、7日には別の判事が、「同性愛を扱った書籍は青少年保護令(ECA)に抵触している。販売する際は、本を黒いビニールで包み、『不適切な内容がふくまれている』との警告文を貼ること」を命じた。
 リオ市は7日夜、同性愛関連書籍の取り締まりに再度動いたが、今度は人気YouTuberのフェリペ・ネット氏が、関連書籍1万4千部を自費で購入し、来場者に配布した。会場には受け取った書籍を手に、「検閲反対」と叫び、行進する人々の姿も見られた。
 クリヴェラ市長の動きには連邦検察庁特捜局(PGR)も反対。ラケル・ドッジPGR長官の要請を受けたジアス・トフォリ最高裁判事は8日、「民主主義は自由な意見のやりとりを大前提にしている。市長が問題にした書籍はECAに抵触しておらず、黒ビニールで包むことや回収は正当化されない」との書面を出した。また、ジウマール・メンデス最高裁判事も同日、「本の回収は『検閲』に他ならない」との見解を示した。
 クリヴェラ市長は8日、「多くの人が誤解している。検閲でも、同性愛嫌悪でもない。ECAを遵守し、子供や家族を守りたいだけだ」とする動画をツイッターで公開した。
 なお、今回の騒動で、ブックフェアー出展出版社の一部は、前回の2017年より大幅に売り上げを伸ばした。