《ブラジル北東部》史上最大の海洋環境破壊に=漂着したのはベ国産原油=流出原因は未だ分からず

原油の塊が広がる海岸(Adema/Governo de Sergipe)

 【既報関連】ペトロブラス社と海軍が行っていた調査により、ブラジル北東部の海岸に漂着した原油はベネズエラ産のものである事が判明したが、原油流出の原因はまだ特定出来ていないと8~9日付現地紙、サイトが報じた。
 原油の漂着は9月2日にペルナンブコ州から始まったとされていたが、実際には、8月30日にパライバ州のコンデ、ピチンブ両市の3海岸で漂着が認められていた事がわかった。8日現在の汚染は9州62市、138箇所に拡大している。
 海洋や海岸を汚染している原油が国内で生産されているものではない事は9月から言われていたが、原油成分を分析した結果、ベネズエラ産原油である事が判明した。ペトロブラス社は、同国の石油公社と共同で運営しているペルナンブコ州の製油所でも同国産の原油は精製していないと明言した。
 原油がどのようにして流れついたかについては当初、タンカーの船倉に残っていた原油が清掃中に誤って海洋に流れ出たとも考えられていた。だが、海岸部で回収された原油の塊が133トンに上る事や、原油漂着が1カ月以上に及んでいる事などから、何者かが意図的に海に投入した可能性も強まっている。
 海洋学者のマルコス・シウヴァ氏は、原油が海に流入したのは、ペルナンブコ州とパライバ州の間で、40~50キロの沖合いである可能性を指摘。ペトロブラス社のカステロ・ブランコ総裁は、船が沈没して流出、別の船に原油を移す際に起きた事故、犯罪行為の三つの可能性を指摘している。
 原油は様々な汚染物質を含んでおり、肌に触れたり、汚染された水を飲んだりすれば健康被害も起こり得る。北東部では原油漂着後、海水浴や漁が出来なくなるなど、漁業や観光業への影響が深刻化。7日に緊急事態を宣言したセルジッペ州では、海岸の利用を控えるようにとの通達を出し、飲用水を取水するサンフランシスコ川やヴァザ・バリス川の河口付近にはPB提供のオイルフェンスを張り巡らした。
 生態系への被害も深刻で、リオ・グランデ・ド・ノルテ連邦大学のマリア・クリスチーナ・アラウージョ教授が、原油除去が困難なマングローブの林などに回復不能な被害が生じる可能性を指摘。原油漂着が止まっても回復には時間がかかるという。また、8日までに少なくともウミガメ9匹と海鳥1羽が死に、ウミガメ6匹も観察中と報告した。
 他の専門家は原油漂着を受け、観察中の水生哺乳類マナティーを別の場所に移送。バイア州の国立海洋公園にも被害が及ぶ可能性や、クジラの繁殖などへの影響も懸念されている。
 カステロ・ブランコ・ペトロブラス社総裁らは原油漂着が止まる様子がない事を憂慮しており、リオ・グランデ・ド・ノルテ連邦大学のフラビオ・リマ教授も、「間違いなく、北東部海岸で起きた史上最大の環境破壊だ」と評価している。