チリ=暴動で11人死亡、非常事態宣言=地下鉄運賃値上げがきっかけ=日頃の経済政策への不満爆発=ペルー、エクアドルに続く大騒動

20日、サンチアゴでの軍隊(Reuter/Edgard Garrido)

 チリの首都サンチアゴで、地下鉄料金の値上げをきっかけとする暴動が多発し、21日午前までに11人が死亡する非常事態となっている。南米ではこのところ、動乱が相次ぐ状況に陥っている。20~21日付ブラジル国内紙、サイトが報じている。

 チリ国民の抗議活動そのものは11日頃から起きていた。それは6日に発表されたサンチアゴの地下鉄料金をピーク時に3・75%値上げする件に同市の高校生が反対して無賃乗車などを始めたもので、14日以降、これに参加する学校や人々が徐々に増え、地下鉄の駅を占拠し、利用者に無料で利用させるという形に発展していった。
 15日からは警官が駅の警備を固めたが、労働者たちも経済省の政策に反対を唱えたため、市内でも抗議デモなどが置きはじめた。18日からは地下鉄が閉鎖され、バスの焼き討ちやデモ隊と警官との衝突も激化。暴動の激化に伴い、金融機関のATM破壊やスーパーマーケットでの略奪なども起きはじめた。18日には電力公社やチリ銀行への放火や地下鉄の駅への火炎瓶投下も起きたため、非常事態も宣言された。チリ警察の発表によると、18日だけで180人が逮捕され、暴動はサンチアゴ以外にも広まっていった。
 暴動激化を受け、セバスチアン・ピニェラ大統領は19日に地下鉄の値上げ撤回を宣言したが、暴動は収まらず、サンチアゴでは19日に夜間の外出禁止令が出た。この数時間前には非常事態も宣言されていたが、数千人の国民が外に出て抗議活動を行った結果、スーパーで40件以上の略奪行為があった他、放火されたところも出た。
 政府は、ピノチェト独裁政権末期の1990年以来となる、軍の派遣を行い、デモを抑制しようとしたが収集できず、21日午前までの逮捕者は約1500人、死者も11人に達する異常事態となった。
 20日はサンチアゴ市内の商店街の多くが閉まり、空港でも少なくとも95便のフライトが欠航になった。
 この背景には、ピニェラ政権が打ち出している経済政策に対する国民の不満があるという。銀行総裁や企業家としても知られた保守派のピニェラ氏だが、その政権下では年金生活者の受給額減少が起こり、保健衛生費や教育費の使い方に対する不満も多い。また、生活費高騰や社会格差拡大も起きているという。
 チリの社会保障制度はラ米でも早い時期に制定され、ボルソナロ政権でもパウロ・ゲデス経済相が社会保障制度改革のモデルにしている。
 南米では、ここ1カ月で動乱が立て続けに起きている。先月の末にはペルーで大統領の共和国議会解散宣言に対し、議会が大統領停職宣言で返す事態が起きた。今月上旬には、エクアドルで燃料代値上げに反対する国民のストと暴動が1週間以上続き、議事堂の占拠や政府機能移転などの異常事態が起きている。