県連故郷巡りアマゾン=90周年に沸く「緑の天国」=(10)=非日系生徒が8割の越知学園

越知日伯学園の越知恭子学園長

 14日昼、マンガル・ダス・ガルサス公園で昼食を取る一行とは別に、汎アマゾニア日伯協会の横にあるレストラン「博多」へ向かった。ここでは、90周年式典を直前に控えたアマゾン日本人移住90周年記念祭パラー実行委員会(生田勇治祭典委員長)が、主だった人を迎えて歓迎昼食会を開催していた。
 パラー日系商工会議所の山中正二副会頭が実行委員長、越知日伯学園の越智恭子学園長が司会を務め、山田彰駐ブラジル特命全権大使、石川レナトブラジル日本文化福祉協会会長、山田康夫県連会長が来賓として祝辞を述べた。
 浜田圭司在ベレン領事事務所所長が乾杯の音頭を取り、昼食会が始まった。山中副会頭が「アマゾンの名物、特に秋篠宮殿下がいらっしゃった時にご試食いただいた『マパラ』をお召し上がりください」と述べたように、食卓にはマパラ、フィリョッチ、タモアタなどアマゾンの様々な川魚料理、マニソバ、タカカーなどのアマゾン料理が並べられた。
 秋篠宮殿下が召し上がった『マパラ』は、トカンチンス河で獲れる川魚で、日本人移民は蒲焼や煮つけにして食べたという。確かに、日本の鰻のようなまったりとした脂質の白身肉なので、しっかりタレの味を染み込ませて調理する料理に合いそうだ。
 博多が心を込めて作った料理を堪能し、宴もたけなわの頃、越知学園長(72、広島県)が同学園の現状を話してくれた。同学園は2007年に創立され、16年に創立10周年が祝われた。現在の生徒は800人、80%が非日系人だ。
 「女性が社会進出する現代社会で求められている教育」を考え、幼稚園、小学校、中学校、日本語コースを設置している。半日学習が一般的なブラジルで全日制コースを設置し、早期外国語教育、子供の自立を目指すモンテッソーリ教育を行うなどの特色を持つ。
 情操教育にも力を入れ、音楽、和太鼓、空手なども希望者に教えている他、英語も学べる。「子どもを安心して1日預けられるように、学校で習い事が完結できるようにしたい」との思いが反映されている。
 現在の課題を聞くと、「土地購入がなかなかできないこと。まだ借家なんですよ」と語る。高等学校まで教育を行いたいが、敷地が増えなければ高等学校の設置は難しいのが悩みだ。
 高等学校まで増やすだけでなく、パラー連邦大学に日本語学科を設置し、日本語教育をさらに根付かせたいという思いもある。「非日系人が受けられる研修がもっと充実すれば」との希望も語った。
 近年の日本文化ブームにより、日本語学習に熱心な非日系人が増えており、「頑張って日本語能力試験N2を取得する人も多い」と語る。「最近だと、非日系人も行くことが可能な香川県費留学で6人が日本で研修している。帰って来ると、彼らは県人会会員となり、会のために活躍してくれる。彼らにもっとチャンスをあげられれば」と越知学園長は熱を込める。
 戦前にパリンチンスに移民を送り込んだ国士舘高等拓植学校(高拓)が設置されていた国士舘大学(在東京)と連絡を取り、留学ができないか話し合いを重ねている。「リオ・オリンピックでは、日本人が最後にゴミを回収するのをブラジル人たちは感動していた。日本文化と言語を学んで視野を広げ、生徒の人格形成に役立てば」との思いを語った。(つづく、有馬亜季子記者)