《ブラジル》北東部=原油汚染で健康被害確認=魚介類からも重金属検出=回収した原油の扱いで混乱

原油が付着した雑木や地面を清掃する人々(Elói Corrêa/GOVBA)

 【既報関連】8月30日以降続く、北東部への原油漂着で、人体への健康被害や、魚介類の重金属汚染が確認され始めたと23、24日付現地紙、サイトが報じた。
 原油が漂着した市や海岸に関する報告は、8月30日以降、連日繰り返されている。今月初旬は漂着が止まっていたペルナンブコ州では、24日未明も北部イタマラカー市のパウ・アマレロ海岸やパウリスタ市のピラール海岸への原油漂着を確認。同州は同日、24時間体制で原油漂着への対応を行うための直通電話185を開設した。
 また、人体への健康被害も報告され始めた。具体例は、17日に原油漂着が確認されたペルナンブコ州南部のサンジョゼ・ダ・コロア・グランデ市で現油回収を手伝ったボランティアのケースだ。18日以降、同市の病院で治療を受けたボランティア17人が訴えた症状は、原油に触れて生じる発疹やしみ、火傷、かゆみと、原油から生じるガスを吸い込んで起きる頭痛や嘔吐、吐き気、のどの痛み、意識の混濁などに大別される。
 同市保健局によると、ボランティア以外にも、最低4人の兵士が中毒症状を起こしている。
 魚介類の重金属汚染に関する調査はバイア連邦大学が行っており、魚や貝など50点を分析した結果、全てのサンプルから重金属が検出された。北東部では既に、汚染海域で獲れた魚介類は食べないようにとの指示が出ており、水産業従事者を取り巻く環境は一層厳しさを増している。

岩場にこびりついた原油を取り除く清掃職員ら(SECOM/Salvador)

 原油で汚染された水域の水生動物は原油付着による窒息死などを起こす他、重金属による中毒症状も起こし得る。また、重金属で汚染された魚介類を食べると、吐き気や嘔吐、不整脈、呼吸器系の疾患などが引き起こされる可能性がある。
 バイア連邦大学のフランシスコ・ケウモ教授によると、食物連鎖によって人体に入った重金属は排出されず、体内に留まるため、非常に危険だという。また、原油で汚染された海岸や海、マングローブの林などでは、原油を全て取り除いても、最低でも10年は原油汚染の影響が残るという。
 北東部の水産業従事者は既に、折角獲った魚介類を捨てる必要に迫られるなど、原油漂着による影響に直面しているが、生活保障の対策などはまだ充分に煮詰まっていない。
 また、回収した原油の処理についても、諸機関の見解や対策が一致しておらず、原油や原油と共に巻き取った砂入りの袋が野ざらしにされているところがあるなど、保管方法や保管場所、責任の所在などで混乱も生じているようだ。

海岸に漂着する前の原油塊を回収しようとする人々(MMA)