《ブラジル》海洋公園にも原油到達?=クジラやサンゴへの影響は=デルタ社は原油漏れを否定

サンタバルバラ島の岩に付着した原油塊(Divulgação/Marinha)

 【既報関連】8月30日から続く北東部への原油漂着が、南米一の海洋生物の宝庫、アブロリョス国立海洋公園を脅かし始めたと3~4日付現地紙、サイトが報じた。
 2日現在の原油漂着確認地点は、9州101市、296カ所で、2日も原油塊が見つかった場所は49カ所あった。また、海軍は2日、アブロリョス諸島の一つで海軍が管理する灯台もあるサンタバルバラ島への原油塊到着を確認した。
 発表通りなら、アブロリョス国立海洋公園そのものには原油塊はまだ届いていないが、原油塊がバイア州に到達し始めた10月3日以降、関係者を最も恐れされていた海洋公園への原油塊到着が現実のものとなった。
 アブロリョス地区のポンタ・ダ・バレイア、カラヴェラスなどで原油塊が確認され始めた10月28日以降、海軍や国家原油庁(ANP)、国立再生可能天然資源環境院(Ibama)からなる監視・評価グループ(GAA)は、同海洋公園への原油塊到着を避けるため、海軍やペトロブラス社の船舶、小型船などを動員し、海中の原油塊回収などに努めてきた。
 また、バイア州南部カナヴィエイラスにあり、アブロリョス地区約10万ヘクタールの海域保護などに当たる、漁師などからなる民間ボランティア団体、採掘予備母協会(Resex)は、同州に原油が到達する前から活動域を区分けし、海中や海岸、マングローブの林なども含めた地域の原油漂着を監視する活動手順などを整えていた。
 水産業従事者、生物多様性保全のためのシコ・メンデス研究所(ICMBio)職員ら、計約600人は、目の細かい網を使うなどして、10月28日に海中から約80キロの原油を回収。翌29日も海岸部で600キロの原油を回収した。カナヴィエイラスより南のサンタクルス・カブラリアやベウモンテ両市の海岸で原油塊を発見したのも彼らで、海中にはより多くの原油が漂っているはずと指摘していた。
 また、海洋公園内で活動する、国際海洋保護と戦略担当理事のギリェルメ・ドゥトラ氏によると、10月28日~今月2日までのカナヴィエイラスでの原油回収量は11トンに上るという。
 アブロリョス地区ではシロナガスクジラ約9千頭が繁殖期を過ごす他、ウミガメやこの水域にしかないサンゴなど、絶滅危惧種も含む動植物が数多く生息。同水域の原油汚染は、取り返しのつかない損失をもたらす可能性が強い。
 なお、1日に原油流出源として捜査対象となったギリシャのデルタ・タンカーズ社所有のボウボウリナ丸については、デルタ社が2日、ベネズエラ産原油はマレーシアで積み降ろしたが、原油損失は報告されていないとの声明を出しており、継続捜査が必要だ。