《ブラジル》国際ジャーナリストのグリーンウォルド氏、極右司会者に殴られる=ラジオ番組の生放送中に

グレン・グリーンウォルド氏

 現在、リオ市在住の米国の著名ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏(52)が8日、ラジオ番組の生放送中に、番組司会をつとめる極右ジャーナリストに殴られる被害を受けた。
 グリーンウォルド氏は2013年、米国のアメリカ国家安全保障局(NSA)の諜報活動を暴露したエドゥアルド・スノーデン氏から受け取った内部文書の暴露報道を行って、世界的に有名なジャーナリストとなり、ピューリッツァーをはじめとした国際的な報道の賞や、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞も受賞している。
 同氏はブラジル人の恋人デビッド・ミランダ下院議員と同性愛結婚し、現在はリオ市で生活中。そこでサイト「ジ・インターセプト」を運営している。
 今年6月、ハッカーから譲り受けた携帯アプリでの通信記録を基に、ブラジル最大のスキャンダルと呼ばれた「ラヴァ・ジャット作戦」の担当判事セルジオ・モロ現法相が、憲法違反とされる検察への指示を出していたことなどを暴露。検察との癒着ぶりや、根拠に欠ける推理、捜査対象の政治家を依り好みしていた疑惑をさらけ出し、国際的にも「ブラジルの汚職撲滅のヒーロー」とされていたモロ氏のイメージを覆した。この報道は「ヴァザ・ジャット報道」としてブラジルでは知られている。
 だが、ヴァザ・ジャット報道は、2016年に政権を追われ、18年に収賄容疑で実刑を受けたルーラ元大統領の労働者党に有利だとして、右派や極右派の国民の強い反感も買っていた。そんな中で今回のような事件が起こった。
 この日、グリーンウォルド氏は報道ラジオ局「ジョーヴェム・パン」の番組に出演。司会は、ブラジルの軍政時代から極右ジャーナリストとして知られるアウグスト・ヌーネス氏(70)だ。
 ヌーネス氏は放送中、グリーンウォルド氏に対し、「あなたは盗んだ文書を書くのに忙しい。夫のミランダ氏は下院議員だからブラジリアにいる。そういう中でどうやって2人の子供を育てるのか」と切り出した。
 2人の子供は養子であることが広く知られており、ヌーネス氏の発言は同性愛者に対する挑発のようにも受け取られた。
 これに立腹したグリーンウォルド氏は、「子供をだしに使うとは臆病者め」と言い、さらに「臆病者」という単語を繰り返して、ヌーネス氏をなじった。それに腹をたてたヌーネス氏は、いきなり、グリーンウォルド氏に殴りかかった。
 同氏は何発か殴られ、腹を立てて逆に殴り返そうともしたが、2人ともスタッフに制止された。この模様はネット上でも生映像で配信された。
 7日昼、ブラジルのネットはこの話題一色となった。ヌーネス氏の行為は報道機関では批判されたが、ネット上では、ボルソナロ大統領支持者が「よくぞやってくれた」「英雄だ」とヌーネス氏を称える声も多くあがった。
 グリーンウォルド氏が世界的な有名人であるため、この件は国際的にも報道された。中でも、数々の政治的な楽曲で知られる米国のバンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの中心人物トム・モレロは、「僕の友人であり、世界で最も聡明で思慮深く、勇敢なジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドが、ブラジルでのインタビューで身体的暴力を受け、同性愛差別に当たる言葉を浴びせられた」とツイッターで報告し、話題を集めていた。(7日付フォーリャ紙電子版、7日付UOLサイトなどより)