ボリビア政変=モラレス大統領が辞任発表=不正選挙疑惑の混乱収束せず=幹部も続々辞任、権力の空白発生

辞任を発表するエヴォ・モラレス大統領(ABI)

 【既報関連】ボリビアのエヴォ・モラレス大統領が10日、辞任を表明した。同大統領は、大統領4選を禁じる憲法や16年の国民投票の結果を否定する最高裁判決を得て、大統領選立候補を強行。選挙や開票手続きの正当性に疑問の声が上がる中、10月21日に当選が宣言(正式発表は24日)されたが、辞任を求める国民の抗議デモは収束せず、遂に軍にも見放されて決断した。
 米州機構(OEA)の選挙監視委員会は9日、10月の大統領選挙で不正があったと報告。10日には、選挙無効と再選挙の実施を勧告した。
 モラレス前大統領は10日、再選挙に応じる構えを見せたが、軍のトップのウィリアンス・カリアン氏が同日午後、「混乱を収めるためには辞職しかない」と明言。辞任会見の前には下院議長公邸や鉱山相や、モラレス元大統領の姉妹のエステル氏私邸、チュキサカ、オルロ両県の県知事公邸にも火が放たれた。
 モラレス前大統領は、辞任会見で「自分はクーデターの被害者だ。辞任するのは、自分の支持組織への暴力行為を止めさせるため」とした。
 ボリビアの憲法では、大統領、副大統領の職が空席になった場合は上院議長がその職務を務め、上院議長も引き継げないなら下院議長が代行し、新たに総選挙を行うと定められている。
 しかし、正副大統領に続き、アドリアナ・サルヴァティエラ上院議長とヴィクトル・ボルダ下院議長も相次いで辞任を表明したため、現在は権力の空白が起こっている。地元TV局は「48時間以内に両院議員総会を開き、今後の方針を決める」と報じている。
 また、選挙での不正が明らかになったことを受け、ボリビア選挙高裁正副長官のマリア・キスペ氏とアントニオ・コスタス氏が即日逮捕された。
 モラレス氏の辞任発表後も、首都ラ・パス、エル・アルト、コチャバンバなどの主要都市では放火や商店略奪、住居への攻撃などが発生した。
 モラレス氏の前々代の大統領(03年10月~05年6月)で、10月の大統領選で敗れたカルロス・メサ氏は、「専制政治の終了」と辞任を喜んでいる。
 また、メキシコ外務相マルセロ・エブラルド氏は、モラレス氏が身柄の保護を求めるなら、ラ・パスにある同国大使館で受け入れると表明した。同大使館にはすでに、前モラレス政権関係者20人が保護されている。
 ブラジルのボルソナロ大統領はボリビア政変に関し、「大統領選挙における不正行為がモラレス大統領辞任という結末をもたらした。これから得られる教訓は、票というものは実際に目で見て数えなくてはいけないということだ。(現在の電子投票ではなく)記入式投票をブラジルに!」と、10日の夜にツイートしている。
 また、8日に釈放されたばかりのルーラ元大統領は、「仲間であるエヴォ・モラレスがクーデターに遭い、辞任を余儀なくされた。ラテン・アメリカ諸国に、民主主義や最貧層を社会に取り込むことの必要性を理解しない経済エリートが存在することは残念」とツイートした。