《ブラジル》ボルソナロが新党結成を決意=名称は「ブラジル同盟」=議会や支援金で圧倒的に不利=申請そのものも時間要する

11日のボルソナロ氏(Alan Santos/PR)

 ボルソナロ大統領は、所属の社会自由党(PSL)を抜け、自身の新党「ブラジル同盟(アリアンサ・ペロ・ブラジル)、以下APB」の結党を決意し、ついてくる意向の議員達との会合を12日に開いた。12日付現地紙が報じている。

 新党結成の背景には、ボルソナロ氏とPSLとの対立がある。PSLは現在、昨年の統一選での幽霊(ラランジャ)候補問題で揺れているが、これで自身のイメージが崩れることを恐れ、ボルソナロ氏は党首のルシアノ・ビヴァール氏の解任を求めていた。
 だが、PSLは20数年前にビヴァール氏が結党した党だ。さらに、ボルソナロ氏にとっては、昨年の大統領選で公認党が決まらなかったところに名乗り出た党でもあるため、実権を握るのは困難だと見られていた。
 そのための新党結党ではあるが、ボルソナロ氏にとっては決して楽な道のりではない。
 まず、議会における大統領の勢力ダウンの可能性が否めないことだ。PSLの議員は現在、下院2位の52人だが、今回のボルソナロ氏の離党でついて行くと予想されるのは27人で、同氏と対立した前議会政府リーダーのジョイセ・ハッセルマン氏や、同党の前下院リーダーのデレガード・ヴァウジール氏といった、議会で中枢を担っていた下議は含まれていない。
 また、政党を作るにも時間を要する。結党のためには、最低でも9州で50万人の署名を集める必要がある。また、署名が有効か否かを選挙高等裁判所が確認するのにも時間がかかる。2011年に当時のサンパウロ市市長だったジルベルト・カサビ氏が社会民主党(PSD)を結党した際は、7カ月を擁している。
 また、仮に結党の手続きが年内に済んだとしても、2020年度の選挙支援金の63%は2019年末の時点での所属下議数によって割当額が決まり、35%は2018年の選挙で当選者を出した党の得票数で決められる。その場合、来年行われる市長・市議選においては、PSLを離れた議員たちの条件は遥かに不利になる。
 また、政党資金も18年の下議選での得票数で割り当てが決まるため、新党への割当はない。選挙前の特定期間以外の時期に政党を変わった議員は、議席や委員会参加資格、議長、書記、委員長といった役職も失う。
 PSLとの対立が決定的になって以降、現在、結党手続きの最終段階にあるという全国民主連合(UDN)をはじめ、いくつかの政党がボルソナロ氏の受け入れに興味を示していると報じられていたが、党移籍に伴う下議らの議席剥奪の問題もあった。
 なお、ボルソナロ氏がAPBに移ることになれば、1990年に下議として政治家人生をスタートさせて以降、これが通算九つめの政党となる。
 なお、新党が正式に決まるまで、ボルソナロ氏らは「無所属」となる見込みだ。